フジテレビ清水賢治社長の下で改革が進むフジテレビ

フジテレビを揺るがした「中居正広氏を巡るトラブル」から1年。社長交代という未曾有の事態を経て、親会社フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は2026年2月、ガバナンス強化と経営再生を柱としたアクションプランのアップデートを断行した。表面上は「広告収入の回復」と「大幅増配」で株主の期待を繋ぎ止める同社だが、その足元では、制作予算の劇的圧縮やベテラン社員の流出といった“異常事態”が進行している。果たして、不動産事業に頼らざるを得ない「営業赤字体質」から脱却し、コンテンツメーカーとして真の復活を遂げられるのか。財務戦略と制作現場、2つのリアルな証言からFMHの投資価値を再定義する。親会社であるFMHの財務戦略と、事業会社(フジテレビ)の制作現場という2つの視点から、投資判断の材料を探る。(綾部和也、ダイヤモンド・ザイ編集部)

純利益は何とか確保も
本業の「稼ぐ力」には疑問符

 中居正広氏による女性トラブルをきっかけに起こった、いわゆる「フジテレビ問題」。危機管理能力の欠如や、過去のコンプライアンス問題などが世間に明るみとなり、港浩一前社長が引責辞任。それから、1年以上が経過した。

 2025年6月の株主総会を経て経営陣が刷新され、新社長・清水賢治氏による構造改革もあって、社内のコンプライアンスは徹底されていく中、一時は激減した広告スポンサーも90%近く戻ってきたという。

 そこで今回、フジテレビの事業を大きな収益の源泉とする親会社のFMHを「事業戦略」と「制作現場」の2つの視点で追うことで、同会社の投資判断の材料を探りたい。

 まずは経営面について。2026年2月3日、FMHは2026年3月期の第3四半期の連結業績を発表し、通期業績の赤字幅を縮小する、上方修正をおこなった。

 フジテレビの広告収入減少により、連結営業赤字となっていたが、足元の回復を受けて、修正後の通期売上高は前回発表比84億円増の5527億円、営業損益は33億円改善して72億円の赤字となる見通しだ。回復を牽引する主な要因は2つ。1つ目はメディア事業における地上波広告収入(特にスポット広告)が想定以上のペースで回復している点。特にスポット広告収入は前回予想を31億円上回る見込みだという。

 2つ目は、都市開発・観光事業の好調である。マンション販売の進展や、インバウンド需要に伴うホテル稼働率の上昇が利益を押し上げている 。依然として本業の営業損益は赤字を見込むものの、各事業の改善により、利益水準は当初計画を大きく上回る見込みである。

 営業損失を計上しながらも、親会社株主に帰属する当期純利益を225億円確保できる背景には、主に投資有価証券売却益などの特別利益の計上がある。政策保有株式の売却等を進めたことで、最終的な利益水準を押し上げた。

 以上、見てきたように、赤字幅縮小・黒字着地と、同社は一見回復傾向に見える。今後、FMHの長期的な業績の成長と株価の向上は期待できるのだろうか。

 ザイ・アナリストの仲村幸浩さんによると「当面は様子見ムード」だという。

「2月3日にFMHは改革アクションプランをアップデートし、次の3つの内容を新たに公表しました。①自社株買いを行う計画を前倒しし、2026年2~3月に2350億円を上限とする自社株買いを実施、②都市開発と観光事業への外部資本導入の検討開始、③2027年3月期から2028年3月期までの2年間は1株当たり配当金を200円とする、というものです。

 これらは、いわゆるアクティビスト(物言う株主)からの要望に沿ったものですが、肝心の長期的な事業成長という意味では、まだ評価は厳しいといえるでしょう。というのも、②の外部資本導入の検討開始においては“完全売却も除外しない見込み”としているからです」(仲村さん)

 もし、都市開発・観光事業という安定収益源を完全売却することになれば、FMHはフジテレビがメインとするメディア・コンテンツ事業に専念せざるを得ない。つまり、ヒットコンテンツが出るか否かで収益が大きく変動する事業のため、現時点では不確実性が高いのだ。

「メディア・コンテンツ事業の成功のカギを握るのは(1)有力IP(ドラマやアニメの著作権ビジネス)の創出や、(2)ネットフリックスなどといった強力なプラットフォームの構築です。(1)が成功すれば、アニメ化や映画化、舞台化、グッズ販売などの横展開も可能。(2)も収益率が高いため、成功すれば大きな利益が伴いますが、フジテレビは現状、どちらもまだ弱い状態です」(仲村さん)

 フジテレビはオリジナルコンテンツなども視聴可能な動画配信サービス『FOD』を運営するが、プラットフォームとしてはまだ存在感に乏しい。F1の独占配信なども始めたが、スポーツの配信権利の獲得競争は激化しており、これにかかる費用は高騰中だ。

「IPの創出はトライ&エラーの連続で時間やお金がかかり、有力プラットフォームの構築も莫大な投資が必要です。都市開発・観光事業への外部資本導入でまとまった資金が入るでしょうが、完全売却となれば中長期的には資金面での壁にもぶつかりそうです。メディア・コンテンツ事業は浮き沈みも激しく、当面は様子見ムードでしょう」(仲村さん)

 2026年5月には改革アクションプランのさらなるアップデートも予定されている。成長ストーリーがどれだけ明確化されるかに注目したい。

制作予算の大幅な圧縮と
新番組で起こった“異常事態”

 投資家が注目すべきは、FMHの収益源泉である事業会社・フジテレビの変容だ。そして、現場の「制作力」と「人材」の現状は、FMHの将来的なコンテンツ競争力を占う先行指標となるはず。社長交代後、フジテレビの「現場」にはどんな変化が起こっているのだろうか。

 現場の関係者から、フジテレビの変貌する実像に迫った。