【東京】新型コロナウイルス感染症の治療のため、日本では自国企業が開発した薬の試験が急いで進められている。だが、その効果には疑問があり、新生児に先天異常を引き起こす可能性もある。
医師らによれば、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が開発した「アビガン」と呼ばれるこの医薬品の試験実施は、まだ確立された治療方法がない新型コロナウイルスと戦うための薬を求める声を反映したものだ。医師らは、アビガンが最終的に併用療法の一部として役割を果たすかもしれないと述べている。しかし、一部の専門家は倫理的課題を指摘している。
アビガンについて研究したベルギーのルーベン・カトリック大学のウイルス学者、リーン・デラング氏は「試験は非常に慎重に進めるべきだ。例えば18~40歳の女性は(コロナウイルスの)主要なリスクグループではないので、私なら試験に参加させない」と語った。
日本全国でのアビガンの臨床試験は藤田医科大学病院(愛知県豊明市)が中心となり3月第1週に始まった。新型コロナウイルス(COVID-19)の陽性反応が出た者のうち、無症状か軽度の症状の患者約80人を対象に試験を進める予定で、最も若い患者は16歳まで認めるという。女性患者の場合は妊娠検査が行われる。動物実験ではアビガンが精子に影響を与える可能性が示唆されているため、男性患者は28日間にわたり避妊措置を続けるとの約束を求められる。
安倍晋三首相は、テレビで全国中継された2月29日の記者会見の中で、実名を挙げてアビガンを推奨した。安倍首相は、富士フイルムの代表取締役会長とゴルフ仲間であり、2017、18年には、富士フイルムから300万円の政治献金を受けている。安倍氏は、米企業が開発し、日本で新型コロナウイルスへの同様の治療試験が行われている2種類の医薬品には言及しなかった。この2薬品は、ギリアド・サイエンシズ社のレムデシビル、アッヴィ社のカレトラだ。