その夜、帰宅した沙里さんは、足の裏を見てみた。指のつけねが腫れているような気がするが、それよりも右足の真ん中あたりに、白く硬く盛り上がった直径1.5センチ程度の魚の目が気になった。

「これかしら、痛みの原因は」

 以前からあった魚の目だが、悪化している可能性はある。人やできた場所によっては激痛になることもあると聞いた覚えがあるからきっとそうだ。これまで、靴の中に小石が入ったような違和感はあっても、耐えがたい痛みが走ることはなかったのは軽症だったからに違いない。

 そんな結論に達した沙里さんは、翌日さっそく皮膚科を受診した。

「昨日いきなり、もの凄く痛くなったんです」

 痛そうな顔をして訴えると、医師は「そうでしょうね。魚の目は悪化すると痛むし、我慢していると歩き方がおかしくなって体のバランスが崩れ、膝や股関節など、いろいろなところに不具合がでてくるんですよ。治さないとね」とうなずき、液体窒素を含ませた綿棒を患部に当てた。凍結療法という治療法だ。

 焼けるような痛みに耐えていると翌日、魚の目のなかに水ぶくれが生じ、乾き、カサブタになり、1週間ほどで取れた。だが形は残っていたため、3週間おきに数回繰り返し、ようやく治療を終えた。

「魚の目は、繰り返す病気です。予防するには、足の保護が大切なんですよ。特に女性の場合はハイヒールやパンプスなど、爪先が圧迫されるような靴を履いているとできちゃうんですけど、ヒールを履かないわけにはいかないお仕事なんですか」

 最後に困ったような顔で尋ねられ、沙里さんは「すいません」と肩をすくめ、頭を下げた。職場はアパレル系、スニーカーが許されるブランドではなかった。

病名はモートン病
足に合わない靴が原因だった

 魚の目を治し、これで大丈夫と安心した沙里さんだったが、2カ月もしないうちに再び痛みに襲われた。靴を履くのが怖いし、つらくて歩けない。もう魚の目はないので、原因はそれ以外にあると考え、整形外科を受診した。