視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
「落語」は心の余裕を取り戻す“特効薬”に
昨今の新型コロナウイルスをめぐる騒動で、ウイルスの感染拡大よりも、はるかに速く拡散されているのが、さまざまな臆測やデマだ。
それらは「新型コロナウイルスは熱に弱く、27度のお湯を飲むと殺菌効果がある」だとか、「中国からの輸入に頼っているので、今後トイレットペーパーが不足する」といった、落ち着いて考えたり、少し調べたりすれば、すぐにデマだとわかるものばかり。
それなのに、不安をあおられた人々や、それにつけ込み転売を狙うやからが買い占めたせいで、トイレットペーパーやティッシュペーパーが店頭から姿を消すなど、おかしな現象が起きている。
これだけの情報社会にもかかわらず、現代の日本人は、このような怪しげな情報の真偽を冷静に判断できなくなっているのだろうか。
こんな不安に満ちた時期だからこそお薦めしたいのが、ビジネスパーソンに向けた「落語入門書」である本書『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』だ。
落語は、デマを笑い飛ばして相手にしないくらいの心の余裕を持つための「特効薬」になるからだ。
本書は、「落語」の歴史や特徴、他の伝統芸能との違いなどをわかりやすく解説。しかも、ビジネスの教訓にもなりうる古典落語の作品や、プレゼンなどに役立つ落語の「話し方」などを紹介してくれる。
著者は、慶應義塾大学経済学部を卒業後、3年間のサラリーマン体験を経て、落語家の立川談志に弟子入り。2005年に慶大OB初の「真打ち」となった異色の経歴を持つ落語家だ。