米トランプ政権とロシアのプーチン政権の対立関係は、最近の地政学絡みのニュースの中で、最も報道されていないものかもしれない。米国の民主党支持者の多くは、ドナルド・トランプ大統領がウラジーミル・プーチン大統領に意のままに操られているとの強い確信を持ち続けているが、ロシア政府は、危険に見える米国の影響力の拡大を阻止しようと、コストとリスクの大きい戦略を採用している。ここ何週間かでロシアは、この戦略的取り組みを強めている。その一環として、世界のエネルギー市場を再編しロシアの力をそごうとするトランプ政権の取り組みに対抗するため手段を選ばない姿勢を示し、長年の友好国であるベネズエラとイランを犠牲にした。この新たな展開は、サウジアラビアが原油の価格戦争を仕掛けたことで始まった。これは、原油相場の暴落を防ぐための協調行動を取るよう、ロシアを説得するためのサウジの策だった。相場安定のため減産するというサウジの戦略への協力をロシアが拒否したため、サウジ政府は、原油需要が減退している時期に記録的規模の増産を発表した。サウジは、原油相場が下落すれば、ロシアが石油輸出国機構(OPEC)との協調減産を受け入れると期待していた可能性が大きい。