「ルーズヴェルト」は今年1月17日に母港サンディエゴから出港、沖縄南東海域で佐世保から出た強襲揚陸艦(ヘリコプター空母)「アメリカ」などと合流して訓練を行い、3月5日からベトナムのダナンに入港、4日間休養ののち南シナ海で「アメリカ」や横須賀から来たミサイル駆逐艦「マッキャンベル」などと共に“Show of Force”(力の誇示)を行った。

 その後フィリピン海を航行中の24日、乗員3人が新型コロナウイルスに感染していることがわかった。

 検査が進むと26日には25人に拡大したため、27日グアム島アプラ港に緊急入港、31日には感染者が137人に達した。

 艦長ブレット・クロージャー大佐(50)はハワイ・パールハーバーの太平洋艦隊司令部などに深刻な状況を4ページの書簡で直訴し、乗員(4865人)のうち、原子炉や兵器の管理などに当たる保安要員を残し、直ちに大部分を上陸させる必要がある、との意見を具申した。

 クロージャー大佐はその中で「我々は戦争中ではなく、水兵を死なせる必要はない。もし今行動しなければ、我々がもっとも頼りにする資産――水兵を守れない」と訴えた。

 どこの軍でも意見具申は直属上官(この場合は第9空母打撃群司令)に対して行い、指揮系統を逆にたどって上層部に達するのがしきたりだ。

 だが一刻を争う事態だけに、艦長はEメールで20人以上に送信、そのうちの誰かがサンフランシスコ・クロニクル紙に転送した。同紙にこの問題が掲載された後、乗員のうち2700人は下船した。

 海軍長官代行のトーマス・モドリー氏は当初「私は新聞に出るまで知らなかった。艦長の行動は乗員の安全を考えて実行した」と理解を示したが、海軍省内では「情報漏洩の意図はなかったとしても、それがメディアに漏れるような行動は不適切だった」との声が強く、4月2日、クロージャー大佐は艦長を解任された。

 大佐が3日に退艦する際、空母に残っていた乗員のほとんどが格納甲板に集合、一斉に「キャプテン・クロージャー」と叫び続け、盛大な拍手で去る艦長への感謝を表した。

 艦長退艦の儀式とは全く異なり、海軍上層部に対する抗議デモのような騒ぎとなった。

 大佐は当面、海軍に残ることになっているが、海軍省は地位をかけて乗員を守ろうとしたとして「英雄」視されている大佐をどう処遇するか、頭の痛いことだろう。

「3密空間」の空母や潜水艦
感染起きたら拡大止められず

 それ以上に難しいのは、新型コロナウイルスの他の軍艦での艦内感染をどうして防ぐかだ。

 ルーズヴェルトは飛行甲板前方の張り出しを除く全長が317mで、横浜港での長期の係留で712人の感染者がでたクルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス」(全長290m、定員は乗員1200名、乗客2700名、事件当時は計約3700人が乗船)とほぼ同等のサイズだ。