インドの消費市場は拡大しており、日本企業のインドの消費市場への期待は高い。しかし、インドへの進出には未整備なインフラ、難しい労使関係、困難な土地収用など課題は多い。一方、インドではASEANからの工業製品の輸入が急増しており、これらの工業製品の多くは日本企業を含む外国企業によって生産されている。インドの消費市場獲得に向けて、日本企業は、インドへの直接進出、輸出に加え、第3の手段として、ASEANインドFTAを活用し、ASEANの生産拠点からの輸出を検討すべきである。

インドの消費市場の伸びしろ大きく
わが国企業の関心も高まる

おおいずみけいいちろう/1988年03月 京都大学農学研究課大学院修士課程を修了、1990年より調査業務を開始。三井銀総合研究所、さくら総合研究所を経て、2001年日本総合研究部門研究所入社。現在、アジアの経済動向の調査に従事。著書に『消費するアジア-新興国市場の可能性と不安』『老いてゆくアジア-繁栄の構図が変わるとき』(第29回発展途上国研究奨励賞受賞)など。

 2000年以降インドの経済成長は目覚しく、それに伴い消費市場も着実に拡大している。00年から11年の同国の年平均成長率は7.2%と高い。その結果、名目GDPは00年の4764億ドルから11年には1兆6761億ドルと3倍以上に拡大した。00年時点では、日本のGDPの1割程度にすぎなかったが、11年には3割に達した。IMFの経済見通しによれば、20年には4割を超える。名目GDPを市場規模とみなせば、依然として伸びしろは大きい。今後5年間でベトナム一国分の市場がインドに出現することになる。

 こうした状況もあって、日本企業のインドの消費市場への期待は大きい。

 国際協力銀行(JBIC)が毎年行うアンケートでは、インドは有望な投資国・地域の第4位にランキングされている。その魅力を「現地市場の現状規模」と回答した企業は06年の11.7%から2011年には24.4%に上昇しており、さらに、現地市場の将来性と回答した企業は82.3%から90.5%に上昇した(次ページ図表1)。