南北共同連絡事務所の爆破
南北共同連絡事務所が爆破された Photo:Bloomberg/gettyimages

北朝鮮の軍事行動は既定路線か

 6月16日午後、北朝鮮が開城(ケソン)にある南北共同連絡所を爆破した。

 これは2018年の南北首脳会談の結果、南北融和の象徴として建てられたものであり、韓国の文在寅大統領が南北和平プロセスの代表的功績とするものだ。これを破壊するということは、韓国政府に対する打撃を最大化する目的があるとみるべきだろう。

 連絡事務所の破壊は南北関係の清算を意味することを覚悟しなければならない。文政権の南北政策にとって大きな痛手である。

 文大統領が北朝鮮の軍事行動を牽制するため直ちにすべきことは、米トランプ大統領との電話会談であり、米国が韓国の後ろに控えていることを北朝鮮に認識させること、また在韓米軍の駐留経費負担を増額させ、米韓の懸案だった本件を決着させることである。さらに挑発が続けば、合同演習の再開が必要である。ただ、親北政策を進めてきた文大統領に、その判断ができるか疑問である。

 今回分かったことは、北朝鮮の軍事的挑発が決してブラフでないということだ。

 今回の件に先立つ6月13日、北朝鮮は韓国を敵と規定したのに続き、軍事行動の可能性を示唆していた。金正恩・朝鮮労働党委員長の妹である金与正・党第一副部長は同日の談話で、「次回の敵対行動の行使権は我が軍総参謀部に与えるつもりだ」「我が軍隊も人民の怒りを和らげるために何かを決心して断行すると信じている」と述べていた。

 この発言は対南事業を総括する立場の与正氏のものであり、軍総参謀部としては無視できないだろう。しかもこの談話が北朝鮮人民の多くが目にする「労働新聞」に掲載されたことから、単なる脅しとは考えにくい。与正氏は談話の中で、「対南報復計画は、我々内部の国論として固まった」と述べており、軍事的行動は既定路線になりつつあることを示唆していた。

 与正氏は、北朝鮮軍がいつ行動に出るかを推察できるような発言はしなかったが、「南北共同連絡事務所が形もなく崩れる悲惨な光景を見ることになるだろう」と警告した後、「その次の我々の行動」として「総参謀部」に言及したことから、最初の行動は南北共同連絡事務所の破壊であるとの見方が既にあった。

 与正氏は軍事行動をちらつかせるに当たって、韓国政府に向けて「脅迫用」だと勘違いするなとクギを刺していた。ただ、韓国の北朝鮮専門家の多くは「ビラは口実で、北朝鮮は最初から南北関係を破綻させ、朝鮮半島の緊張局面をつくり出そうという戦略的意図を持っている」と分析していた。