自動車業界にとって、新型コロナウイルス危機の「急性」局面は過ぎ去った。だが「慢性」局面は、まだ始まったばかりかもしれない。今回のリセッション(景気後退)で、自動車メーカーの経営破たんは起きていない。資金が豊富に入手できる状況を踏まえれば、破たんするメーカーはなさそうだ。中銀による流動性供給と金融システムの機能維持により、2009年に業界を揺るがしたような存続劇に発展する事態を未然に防いでいる。だがこれが朗報であるのは、ある時点までだ。手元資金が今、潤沢であるということは、後に借金の返済が待っているということだ。新テクノロジーへの開発資金が膨らむ中で、メーカーにとっては、借りる余裕のないはずの債務なのだ。