文政権への不満を強める
北朝鮮と韓国世論

 足元、北朝鮮を支配する金一族は、自国の社会と経済情勢にかなりの危機感を募らせているだろう。国連関係者は、新型コロナウイルスの発生によって中朝国境が閉鎖された結果、北朝鮮の一部で飢えが深刻化していると指摘している。また、大手信用格付け業者は本年の北朝鮮経済の成長率がマイナス6%に陥ると予想している。

 それが現実のものとなれば、北朝鮮は実質GDP成長率がマイナス6.5%に陥った1997年当時のような苦境を迎える可能性がある。当時、北朝鮮は経済環境が悪化する中で金一族の独裁体制維持と国内の引き締めのために、ミサイル(テポドン)の発射実験を強行した。足許の状況はそれによく似ている。

 北朝鮮は韓国からの支援を必要としている。しかし、韓国は国際社会からの反対に直面して平壌宣言を実行に移すことができない。文大統領に対する金正恩・与正兄妹のいら立ちや不満、怒りは相当なものだろう。

 爆破に続き6月22日には、非武装地帯において北朝鮮が韓国へのプロパガンダ放送を流す拡声器を設置したと報じられた。平壌宣言は事実上、破棄された状態だ。同日、韓国の脱北者団体が再度、北朝鮮を批判するビラを飛ばした。北朝鮮の対韓感情は一段と悪化し、韓国に対する批判や強硬姿勢は強まる可能性がある。

 それでも、文大統領はいまだに北朝鮮に対して毅然とした態度を示さず、基本的には宥和路線を重視しているとみられる。見方を変えれば、文氏にとって南北統一の“夢”を支持者とともに追いかける以外に、支持率をつなぎとめる方策は見当たらない。経済運営は失敗し、文氏が「“K防疫”が世界をリードする」と自画自賛した新型コロナウイルスへの対策も十分な効果をあげられていない。北朝鮮の強硬姿勢や感染再拡大への不安、所得・雇用環境への不満が高まり、大統領支持率は4週連続で低下している。

 見方を変えれば、文大統領は国を一つにまとめるのではなく、社会の分断を深刻化させてしまっている。文大統領は、政権交代のたびに過去の大統領経験者が訴追された展開が自らに降りかかることを恐れ、自己保身のために一部の市民団体などが求める南北統一を追求せざるを得なくなっているようだ。