「人・本・旅」を重視する僕が
旅で「市民の顔色」を見る理由
……現代の知の巨人・出口治明講演会質疑応答16

世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU（立命館アジア太平洋大学）学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。
その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著が、大手書店のベストセラーとなり、話題となっている。BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ＝ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した本だ。なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか？
直木賞作家・作詞家のなかにし礼さんが激賞、脳研究者で東京大学教授の池谷裕二氏が絶賛、小説家の宮部みゆき氏が推薦、某有名書店員が「100年残る王道の1冊」「2019年で一番の本」と断言した『哲学と宗教全史』が、2400円＋税という高額本にもかかわらず9万部を突破。「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」では総合グランプリ第6位、リベラルアーツ部門第2位となった。
「日経新聞」「日経MJ」「朝日新聞」「読売新聞」「北海道新聞」「中国新聞」「京都新聞」「神戸新聞」「中日新聞」で大きく掲載。“HONZ”『致知』『週刊朝日』『サンデー毎日』「読売新聞」でも書評が掲載され、話題となっている。
今回も、昨年8月に行われた出口氏の出版講演会終了後に行われた質疑応答の模様をお送りしよう。

日本のユニコーンは
たった3匹

出口：次の方、どうぞ。

男性：中国経済はまだまだ強くなりそうでしょうか。

出口：非常に難しい問題ですが、中国は現在、アメリカに37万人の留学生を出しています。

ちなみに、1995年は4万人ぐらい。同年、日本からは5万人でした。

でも、今、日本からの留学生は2万人を切っています。

ちなみに、中国からアメリカへ渡った37万人は、ほとんどが中国に帰ってきます。

なぜだかわかりますか。

男性：中国へ帰ったらよい生活ができるから。

出口：そうです。

アメリカの成長率が年率3％。中国が6～7％。ということは、同じくらい働いたら中国で働いたほうが2倍儲かる。中国のほうが、成長機会が多いのでアメリカに留学した優秀な中国人がどんどん帰国しているそうです。

それから、「日経新聞」（2019年8月掲載）によれば、ユニコーン（未上場で時価総額10億ドルを超す企業）は世界に380匹いて、アメリカが200匹弱、中国が100匹、日本はたった3匹という衝撃的な話がありました。

中国では日々新しい産業が生まれている。

さらに、中国の官僚は非常に優秀です。

頭がいいだけではなく、大学で共産党員になるには人気投票を無記名でやって、7割の得票がなければ共産党員になれません。

上のほうの官僚は全世界どこでも腐ってしまいがちですが、中国の下のほうの官僚は非常に優秀ですから、少なくともマネージしやすい社会です。

男性：あの国は分裂したり1つの国家になったりの繰り返しですね。

出口：分裂したのは気候が悪いときだけです。始皇帝以来、官僚支配の中央集権国家一本でやってきています。

男性：しかし香港でデモがありましたし、天安門事件もありました。

あの共産党一党独裁体制はまだ続くのでしょうか。

出口：これもよく出る質問ですが、中国人とお話しされたことはありますか？

男性：ありません。