中国は懐が深い

出口:先日、上海でAPU(立命館アジア太平洋大学)卒業生の同窓会に出席ました。

APUの卒業生の中で、卒業後、上海を出たことがない人は今の中国の政治体制について何といっているか。

「習近平も困ったもんやな」
「頭が固いしな」

対して、アメリカと中国を行き来している人はどういっているか。

「中国もアメリカも同じだよ。アメリカには言論の自由があると報道されるけれど、ホワイトハウスでトランプに嫌な質問をしたら、記者章を取り上げられる。やり方の違いだけで中国もアメリカも同じですよ」

同じ共産主義で独裁体制を取っていたソ連と中国は何が違うのか。

中国に関しては、アメリカに行く自由が保証されています。

もちろん、政府に睨まれ、「こいつは思想犯だ」といわれたら出国できない可能性が高いのですが、普通のビジネスパーソンは、平気でアメリカと中国を行き来しています。

だから、「ツイッターやフェイスブックを見れなくて不便だなあ」と誰かがいったら、「え? 見たかったら飛行機に乗れば終わりじゃないか」といっている。中国は懐が深いですよ。

男性:さらにチベットや少数民族の問題もありますよね。

出口:でも、中国の官僚が何といっているかといえば、

「チベットや新疆ウイグルは、独立したかったら、独立したほうが楽だ」と。

膨大なお金をつぎ込んで彼らの生活をキープしているわけですから。

男性:日本が朝鮮を植民地にしたときと大して変わらないですね。

出口:それはかなり違うでしょうね。

男性:違いますか。

出口:日本はもともと違う国に攻めていったわけでしょう? 

チベットも新疆ウイグルも大きい目で見てみたら、もともと中国です。

日本が朝鮮半島を自分の領土にしたのは、あのとき1回だけ。

中国はもともと広い国なので伸び縮みしているだけ。中国が新しく攻めていって他国の領土を獲ったわけではありません。

男性:出口さんの感覚では、中国経済は今後どうでしょうか。

出口:中国経済がおかしくなったら、一番悲惨な目に遭うのは日本です。最大の交易相手国ですからね。

ある程度うまくいってほしいと思いますが、いろいろなデータを見ても、中国は本当に手を打つのが早い。官僚たちが優秀なので、そんなに簡単に壊れないでしょう。