なぜ、娘が内緒で武蔵野の採用面接に?
小山:福島県いわき市にある地域No.1の不動産会社「アドレス株式会社」です。アドレスの高尾昇社長はこういっています。
「当社は不動産会社ですが、実は今から数年前に介護の会社を立ち上げたことがあります。
高齢化社会を見越してでしたが、もう一つ目的がありました。
事業が軌道に乗ったら、いつか娘に継がせようと思っていたのです。
5年で6000万円ほど投資し、機能訓練型のデイサービスを2店舗つくりました。
開業して4年目にようやく黒字になり始め、『よし、これから』と意気込んでいたとき、思いもよらないことが起きました。
娘が私に内緒で『株式会社武蔵野』の採用面接を受け、内定をもらってきたのです(笑)。
プレミアム合宿の面談で小山社長に、『娘は武蔵野の社員になりましたけど、介護事業は500万円の経常利益が出るようになり、ようやく黒字化できました』と報告をしたら、小山社長は何といったと思いますか? こういったのです!
『バカ、そんな会社、売れ! 高尾さんはそんな会社に愛情があるわけない。あなたの愛情が向いているのは会社ではなく娘のほう。だから売ったほうがいい。それに介護の仕事はあなたには向いていない』
黒字にしたことをほめてもらえると思っていた私が浅はかでした。
『では、いくらで売ったらいいですか?』と尋ねたら、さらに驚くべき返事が返ってきました。
『1万円で売れ』
小山社長に『こうしろ』といわれたらやるしかない。
『1万円』で売りに出すと、買取先の社長が『さすがに1万円では申し訳ない』と1500万円も上乗せして、結果的に『1501万円』で買ってくれました。
普通の経営コンサルタントなら『黒字の会社を手放せ』とは絶対にいわないでしょう。
でも小山社長は、私の性格、能力、地域性などを考え、『売ったほうがいい』といった。
結果的に小山社長の判断は正しく、あのまま介護事業を続けていたら、本業の不動産業がおろそかになっていたはずです」(高尾社長)
高尾社長の娘である高尾友美課長は2020年6月まで当社の社員でした(現在はアドレス株式会社の社員)。
事実、父親に内緒で武蔵野に応募してきて、私も高尾社長の娘だとは知りませんでした。
初対面のとき、娘の高尾さんは私にこういいました。
「私の父が小山さんの前で『ハイ』と返事をしているのを見て、びっくりしました。父の口から『ハイ』という単語を初めて聞きましたから(笑)」
子どもの前では「ハイ」といえない頑固おやじでも、私の前ではとても素直になる。そして、嫌々ながら仕方なく実務を変える。そのかいあって、アドレスは、地域で一番の業績を挙げているのです。
――まだまだありそうですが、最後にもう1社、ダントツ社長はいますか?
小山:まだまだいますが、お腹いっぱいでしょう。『門外不出の経営ノート』にこれでもかというくらい紹介してありますから。
――すごいエピソードがたくさんあるのですね。ありがとうございました!