発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
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食費が減らない「根本原因」を取り除け
僕は飲食店を経営していたこともあり、料理は結構得意です。料理イベントを開いてお客さんにふるまったりもしますし、20人入るお店の厨房を一人で回すくらいの調理スキルはあります。しかし、それでも定期的にスーパーに買い物に出て冷蔵庫に常に食材がある状態を維持することができません。どれだけ努力しても無理でした。
しかし、最近は非常に便利なものがあります。インターネットから注文ができるスーパーマーケットと、Amazonパントリー(※食品、日用品などをひとつの箱に詰めて届けてくれるサービス)です。僕の買い出しは9割方これでまかなわれています。
やり方はとてもシンプル。まずは、「食べ物は全部ネットで買う」と決めて、実行してください。西友でもイトーヨーカドーでも構いません。あなたの近所のスーパーの配達サービスと、Amazonだけで必要なものをまかなってみてください。これにより
・家に食料がないので外食してしまうお金
・スーパーで「お得だから」と衝動買いして、結局腐らせてしまった食材のお金
・スーパーまで行くあなたの時間(時間はお金です)
を今すぐ削減することができます。
この話のポイントは、個々の食材の値段や配送料といったちまちました部分は潔く無視すること。そして我々発達障害者にありがちな「家に食料がない」から発生する、本質的で大きな金額に目を向けることです。家に食べ物がなかったからウーバーイーツも呼んでしまうし、外食もしちゃうんですよね。それに比べたら、食材の値段差なんてあまりに小さいことです。
もちろん、スーパーのチラシをきっちりチェックして数十円単位の値段を比較検討し、にんじんの一本までロスなく使う完璧超人にとってこんなライフハックはほとんど意味のないものだと思います。しかし、ついつい買い物に行きそびれて冷蔵庫にしなびた玉ねぎしかない……という状況になってしまう僕やあなたにとっては、大きく人生を変えるものになります。そして何より、ラクです。
「補給」の訓練をする
食料に限らず、ADHD傾向の方の家でよく起こるのが「万物が欠乏する」現象だと思います。出かけようとしたけど、歯ブラシも洗顔フォームも、食パンも水も、挙げ句の果てにベルトもない……これを解決するには生活に必要な物資を、必要になる前に購入する「補給」というスキルが必要です。正直、僕らにとっては結構高度なスキルなのですが、この「補給」のトレーニングとしても、ネットスーパーは最適なのです。
初級編として、まずミネラルウォーターの50本セットを買ってみてください。そして、それが減ってきたら、ポチっとする習慣をつけてみてください。「なくなってから焦る」のではなく「残り10本で注文する」。これがルーチンになれば、トイレットペーパーにもティッシュにも、米にも応用可能です。
スーパーまで歩けない人にはスーパーが来てくれる時代。活用していきましょう。