トランプ政権は、中国の一部IT(情報技術)企業との取引を禁止するなど、中国政府に対して多方面から強硬姿勢を強めている。場合によっては、国家の安全保障を守る上で必要なことかもしれない。だが、政権が先週打ち出した中国企業を米国の証券取引所から締め出す可能性のある方針は、米国民に損害を与え、中国政府の思うツボになりかねない。米議会上院は5月、中国企業が自社の独立監査へのアクセスを米国の公開会社会計監査委員会(PCAOB)に許可しなければ、米取引所での取引を禁止する法案を可決した。大統領の金融市場作業部会は先週、無数の欠陥があるとした上で、この法案を支持した。経営破綻したエネルギー大手エンロンと通信大手ワールドコムの不正会計事件を受け、議会は、2002年に制定されたサーベンス・オクスリー法(SOX法;上場企業会計改革および投資家保護法)の下でPCAOBを設立した。フランスやベルギーなど多くの国がプライバシー法や国家安全保障法により企業の記録を守っているが、米国は70カ国以上と監査情報を共有する合意を結んでいる。
【社説】中国株の締め出し、ツケは米国民に
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