しかし「収支トントン」を実現するのは、多くの人にとってかなり困難だ。再雇用後の年収は300万~400万円、手取りだとさらに100万円近く減る。定年前は会社員としての収入がピークであるため、支出も膨らんでいる。大幅な支出カットが必要となるが、そのことに気が付かないまま再雇用の期間が過ぎてしまう人も少なくない。

60歳時に老後資金が3000万円あっても
老後破綻の可能性がある!?

 いくつかの事例を紹介しよう(相談業務は守秘義務があるため、概要でお伝えする)。

◆ケース1 Aさんの場合
・60歳時点での貯蓄額は、退職金を含めて2000万円。
・その中から住宅ローンの残債1000万円を一括返済し、老後資金は1000万円。
・再雇用後の毎月の収入は、給与と高齢者雇用継続給付金を合わせて、手取り額月28万円。ボーナスは20万円程度が年2回。
・住宅ローンを完済したことに満足し、他の支出の見直しをせずにいたら、毎月5万円、ボーナス時に20万円、合計年100万円の赤字。5年間で500万円を老後資金から取り崩し、65歳時には貯蓄残高は500万円となった。

◆ケース2 Bさんの場合
・60歳時点での貯蓄額は、退職金を含め3000万円。
・定年後は再雇用で働き、同時に企業年金(支給期間10年)は60歳からスタートするので収入に余裕があるように思い、住宅ローンの繰り上げ返済は行わないことにした。住宅ローン返済は78歳まで続く。
・再雇用後の給与は年収400万円、加えて企業年金100万円もあったため、収入ダウンの危機感を持たずに、現役時代の消費生活をそのまま続けた結果、毎年200万円を取り崩し、70歳時の貯蓄残高は1000万円に。70歳からは企業年金もなく、夫婦の公的年金収入300万円のみ。この中から住宅ローン返済と膨らんだ消費支出を続けると、数年後には貯蓄が底をつくことが十分に予想される。