今年7月、張一鳴氏が北京の自宅で朝食を取っていると、コンピューターの画面にメッセージが飛び込んできた。友人が送ってきたリンクの先でトランプ大統領はこう話していた。新型コロナウイルスの発生源は中国であり、対応の一環として張氏が創業した人気動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を禁止するかもしれない――。張氏は心底驚いた。「中国ウイルスだって?」。張氏はのちに周囲にそう語った。新型ウイルスがTikTokと何の関係があるのか。当初の衝撃から事態は急激に悪化した。まずトランプ氏が踏み込んだ。大統領はTikTokが収集したデータを通じて米国の国家安全保障を脅かしていることを理由に、親会社に同アプリの米国事業の売却を命じた。売却しない場合、同アプリの米国での事業は禁止される。