動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の今後について米中両政府がそれぞれ最高レベルで議論したり、巨大ハイテク企業の役員室などでも議題になったりする中、新たに就任した同アプリ運営会社のトップは地政学的ドラマに巻き込まれながらも会社を動かし続けるという、米国企業として困難な任務を背負っている。
ケビン・メイヤー最高経営責任者(CEO)の突然の辞任を受けてTikTokの暫定トップに先月任命された41歳のバネッサ・パパス氏は世界で最も影響力のあるハイテク業界幹部の一人になるかもしれない。しかし同社にとって不利な展開になれば、一連の事態の脚注程度の扱いになるだろう。
オーストラリア出身のパパス氏がTikTokに入社したのは2年前。中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)傘下の同アプリ――トレンドセッターである10代の若者以外にはほぼ知られていなかった――を米国人が喜んで受け入れるようにすることが当時の任務だった。今のパパス氏の仕事はTikTokが生き残るように支えることだ。それが同社の社員の目標でもあるとパパス氏は言う。
「ともに経験しているこの歴史的瞬間は私たちをこれからもずっと結びつけるだろう」。パパス氏はインタビューでこう語った。
ウォルト・ディズニーの幹部だったメイヤー氏は6月にTikTokのCEOに就任。しかしそれから数週間もしないうちに、トランプ政権の高官は数百万人の米国民のデータを握る中国系アプリを巡り、国家安全保障上の懸念を公に議論し始めた。