発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
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僕らが家計簿をつけるのは無理です

 正確な支出の把握は節約の第一歩です、家計簿をつけましょう。

 僕がかつて読んだ本にはそういうことがよく書いてありました。そして、僕も何度となく家計簿をつけることにトライしてきました。その結果として、このような結論が出ました。無理です。

 いや、実際僕だって何度も挑戦はしたんです。しかし、発達障害のせいなのかあるいは生来の怠惰さなのか、とにかく無理でした。小学生の頃「お小遣い帳」がつけられなかったときは「大人になったらできるようになるだろう」と考えていましたが、こうして無事に34歳児となった今は「無理なもんは無理だ」と認める他ありません。

 しかし、現代は便利な時代です。支出の記録を無料で行ってくれる(それどころか、ポイントまでくれる!)存在がいるからです─それは、クレジットカードです。クレジットカードの最も優れた点は、キャッシュレスうんぬんではなく「無料帳簿作成サービス」だと僕は考えています。いつでもネットにさえつなげば利用明細を確認できる利便性を使わない手はありません。

 とにかく難しいことは何もいいません。日常の決済を1枚のクレジットカードに絞ってみてください。毎月決まった日に支出を確認しろなんてこともいいません。思い立った日に確認すれば十分です。僕が使っている楽天カードは、4ヵ月分の明細がアプリからいつでも確認できるのでとても便利です。

機械的な記録で「事実」を把握せよ

 クレジットカードの明細を眺めていて思うことは、人間の「支出を把握する能力」は思った以上に感覚的で正確さを欠くということです。「お金を使いすぎた」と感じるのはたいていの場合、突発的な大きい支出があったときなのですが、実際のところ家計に大きな影響を与えているのはもっと恒常的でだらだらとした認識に残りにくい支出のほうです。

 僕はこの間、「最近タクシーに乗りすぎだ」と感じてクレジットカードの明細を見てみたのですが、実際のところタクシー代は大きな問題ではなく、むしろコンビニエンスストアでやたらとお金を使っている事実に直面させられました。お菓子、雑誌、たばこ、お弁当など、書くのも恥ずかしいほど些細なものですが、用もないのにコンビニで消費することが増えるのは、僕にとってのストレスがたまっているサインなのです。そして、コンビニで食事をまかなう頻度が増えすぎていることも明らかになりました。生活の問題は、そのほとんどがお金の流れに表れてくるのです。

 クレジットカードの明細は事実だけを機械的に記録してくれるので、1ヵ月単位で見返すと自分の支出傾向が完全に見えてしまう。これは本当に便利です。数回乗ったタクシーを気に病んで、生活の本質的な問題が全く見えてないという状況は、僕に限って起きることではないでしょう。本当に感覚はあてになりません。

クレジットカードがなんとなく怖い人へ

 僕は20代の初めくらいまでクレジットカードをほとんど使わない人でした。正直、なんとなく怖かったのです。大学生の頃に一応使った時期はありましたが、1ヵ月単位でまとめて請求が来るあの感じは恐怖でした。「自分はこんなにお金を使ってしまったのか」という事実と向かい合うのって怖いですよね。まして、口座にお金が足りなかったりしたら……。キャッシング枠なんてものは借金地獄の入り口みたいに見えていました。もちろん、何度か頼ったことはあったにしても。

 しかし、断言します。現代においては、「支出管理」の面でクレジットカードは明らかに現金に勝ります。

 「毎日コツコツ支出を記録する」ことが素晴らしい習慣なのは僕も認めます。僕もそれができたらなんて素晴らしいだろうと感じるのは事実です。でも、できないのです。できないことはできないとあきらめ、自分に可能な「思い立ったら確認できる状態をつくる」ことに専念するほうがずっと建設的です。

 今年も家計簿がつけられなかったみなさん、とにかくクレジットカードをつくり、カードアプリをスマホに入れましょう。パソコンからも見られるようにしましょう。とても面倒ですが、毎月の各種支払いをクレジットカード払いにしましょう。

 それだけであなたの生活は変わります。

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