欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長(元ドイツ国防相でアンゲラ・メルケル首相を後ろ盾とする)はこれまで繰り返し、欧州は地政学的に考え、行動すべきだと語ってきた。その考えは正しい。だが最近の出来事をみる限り、地政学的に機能するEUが近いうちに実現する見込みはない。係争地ナゴルノカラバフを巡ってアルメニアとアゼルバイジャンの新たな戦闘が起きる以前から十分ひどい状況だった。EUは北側(ベラルーシ)、東側(シリア戦争および地中海東部の緊張)、南側(リビア)、西側(英EU離脱後の通商交渉が難航)で危機に直面し、どれ一つとしてうまく対応できていない。公平を期して言えば、全てが厄介な問題であり、明確な解決策があるものは一つもない。だが根本的な問題は、EUが最初から地政学に関わる仕組みになっていないことだ。