会議や社内講演会で質疑応答の時間になっても、静まり返って誰も手を挙げない。そんな場に居合わせたことがある人は少なくないだろう。企業や行政などで働き方改革や組織改変などに携わっている沢渡あまね氏は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』で、そういった場面で手が挙がらない会社は、文化度が低い、レガシーな組織と感じるという。なぜ手が挙がらないのか。そして、どうすればそういった組織の体質を変えられるのか。本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

部下から評判がいいリーダーPhoto: Adobe Stock

なぜ会議や講演で質問が出ないのか

 筆者は年に2度ほど、ある講座で講師を務めている。その際、実は一番緊張するのが質問タイムだ。

「誰からも質問が出なかったらどうしよう」と不安になる。というのも、質問が出ないと「興味を持てなかったのかな」「質問も浮かばないくらいつまらなかったのだろうか」と思ってしまうからだ。

 一方で、聴講者の立場に立つと、質問タイムでさっと手を挙げられるかというと、なかなか難しい。だから、質問が出せない気持ちも理解はできる。

 沢渡氏は、大勢の前で手を挙げて質問しにくい要因として、次の4つを挙げる。

①恥ずかしい
見当違いなことを質問してしまい、残念な人だと思われたくない。バカにされたくない。そのような心理的ブレーキもあるだろう。(P.160)
②悪目立ちしたくない
積極的に手を挙げると「意識の高い人」だと思われ、悪目立ちしてしまう。だからおとなしくしていたい。なるべく目立ちたくない。(P.161)
③怒られる
「そんなこと聞いてどうするの?」「そんなことも知らないの?」など上長や周りのメンバーから怒られた経験がある。あるいは他の人が叱責を受ける場面に居合わせたことがある。(P.161)
④思考する習慣、言語化する習慣がない
他人の話を自分ごととしてとらえて思考することに慣れていない。疑問や課題やモヤモヤを言い表す習慣も能力もない。そもそも話の内容が難解で何を質問したらよいのかわからないケースもあろう。(P.161)

 確かに、この4つのどれかに当てはまる場面は、決して珍しくない。

 一方で、④以外はすべて組織の風土や雰囲気の問題だ。自由闊達な発言が許されない空気が醸成されてしまっていると言ってもいいだろう。

 そしてこれは、「組織の心理的安全性が担保されていない状態」とも言える。

 しかし、そういった「雰囲気」や「空気」を変えるにはどうしたらいいのだろうか。

最初の質問が場の空気を決める

 沢渡氏は、その方法として「何と言っても、あなたが率先して手を挙げる」ことを提案している。

いきなり質問する必要はなく、感謝の一言、所感、身近な事象と照らし合わせて考えたことの順で話すと、質問を言葉にするハードルを下げられる。(中略)
いきなり難しい話をすると、質問をするハードルがさらに上がる。後に続く人が手を挙げやすくなる風穴をあなたが開けよう。(P.161)

 そういえば、筆者の先輩でよく講演会で講師を務める人が「自分が参加者の時には、できるだけ簡単な質問を真っ先にするようにしている」と言っていた。

 それはやはり、「これくらいの質問でもいいんだ」と周りに思わせるためだった。自身が講師をしているから、質問が出ないと場の空気が重くなることもよく知っていたのだ。

 これは特別な立場でなくても実践できる。

 組織の体質を少しでも変えたいと思っているのであれば、早速取り入れてみたい方法だ。

質問が出る場は「設計」できる

 運営側の立場であれば、できることはもっと多い。沢渡氏のおすすめの方法は3つある。

 1つ目は、「疑問点を書き出すこと」だ。

・事前に付箋とサインペンを配布し、話を聞きながら疑問に思ったことや、感じたことを書き出してもらう
・(オンラインの場合)チャットに質問を投稿してもらう(P.162)

 付箋は後でホワイトボードに貼ってもらうなり、事務局スタッフが集めるなりして、特定の誰かの発言だけが目立たないやり方で回収する。

 チャットも、事務局にしか見えない設定にして匿名で読み上げると他の人の目も気にならない。

 2つ目は、「グループワークを挟む」だ。

参加者にペア、または3~5名程度のグループに分かれてもらい、所感や質問などを意見交換してもらう。大勢の前では聞きにくいこと、わからなかったことなども、少人数であれば話しやすい。(P.162)

 この方法は筆者も体験したことがあるが、確かに少人数であれば忌憚のない意見も出てくるし、最終的には取りまとめて「こんな意見が出ました」と報告することができるので気楽だ。

 3つ目は、「対談形式にする」だ。

 一人だけが話をする講演会では、内容がわかりづらかったり共感できるポイントが限られたりすることがある。

 そのため、対談形式にすることで、複数の話し手がいれば、誰かの意見には理解・共感できる可能性が上がるというのが、この方法の狙いだ。

モデレータを立てて意見を引き出す対話スタイルで進行する方法もある。わかりにくいと思った内容はモデレータが言い換えて伝える。そのワンクッションがあるだけでも聴衆の共感が増え、質問が活発になる。(P.162)

「質問できない空気」が表す組織の体質

「講演会で質問が出ない」というと、「よくあること」と流されてしまいそうだが、その理由が「周りの目が気になって思ったことが言えない」のであれば、これは大きな問題だ。

 その質問が合っていようと間違っていようと、思ったことを一旦投げかけていいはずの時間が、手を上げにくい空気になっているのであれば、その会社は働きやすい組織とは言えないだろう。

 他の社員たちの前でも「自分の意見を言ってもいい」と思える人が増えることは、活発な議論ができる組織体質を醸成することにつながるはずだ。

 会議のやり方に価値観が出るように、質問の出方にも組織の空気は映る。

「質問できない空気」は、組織の体質そのものなのである。