ジェームズ・ボンドが今年、映画ビジネスを救ってくれることはない。そして、映画業界は、この不死身のスパイでも解決できない長期的な問題に直面している可能性がある。今や映画の公開延期のニュースは当たり前のように感じられるかもしれないが、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開が来月から来年4月に延期になったという2日の発表は、特に痛手が大きかった。同作は、映画館運営会社の事業を下支えする可能性があった今年最後の大作だった。映画館チェーンは現在、計画見直しの必要に迫られている。英シネワールドは5日、米国の500カ所以上の劇場の営業を一時停止すると発表した。秋のシーズンに入って丸一カ月がたったが、調査会社コムスコアによると、米国の劇場の44%がまだ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による閉鎖から営業を再開していない。再開している劇場も観客の入りは芳しくなく、多くの映画ファンが劇場で再び鑑賞するのをためらっていることを示唆している。映画の興行成績を分析するボックス・オフィス・モジョによれば、米国内の週末の興行収入は合計830万ドル(約8億7700万円)と前週比で約12%減、前年同月の週末平均を93%以上下回っている。パンデミックがホワイトハウスにまで及んだという報道も、この状況の助けにならなかったようだ。
映画業界の苦難、想定より長引く可能性
制作遅延や保険の未加入問題で回復がさらに長期化も
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