日本の慢性痛医療を牽引する3トップの出会いのシーンを想像するとわくわくする。

 留学から帰国した北原医師はその後IMS(筋肉内刺激法)の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍するほか、『慢性痛対策基本法(仮)』の成立に向けても尽力している。また牛田医師は、愛知医科大学医学部教授、同大学学際的痛みセンター長および運動療育センター長を兼任。前述した国際疼痛学会の、痛みの定義を決めるタスクフォースのメンバーも務めた。そして柴田医師は、2017年からより難しい慢性痛患者を治療するための入院プログラムに取り組み、着実に成果を上げている。

「慢性痛治療のゴールは、痛みを完全になくすことではありません。痛くても動けるようになること。患者さんにはなかなか理解してもらえませんけどね。

『痛くて働けません』と2年、3年と通院していた患者さんがある日突然スーツを着てきて、『働き始めました。痛みは完全に消えたわけではないけれど、働ける自信がつきました。痛みがつらくなったら、今後は地元の病院で薬を処方してもらうので紹介状を書いてください』と言って見えられるときが、診療していて私が一番うれしい瞬間です」

◎柴田政彦(しばた・まさひこ)
奈良学園大学保健医療学部教授、千里山病院集学的痛みセンター医師
1985年大阪大学医学部卒、1989年佐賀医科大学麻酔科助手、1993年大阪大学医学部麻酔科助手、2007年大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座教授、2018年 奈良学園大学保健医療学部教授。