受信料徴収について、何かと国民からの不満の多いNHKが、ここへ来てテレビ設置の届け出を義務化する要望を提出したという。反発を買うこと必至の迷走に見えるのだが、NHKに起死回生の一手はあるのだろうか。(フリーライター 武藤弘樹)
NHKの起死回生なるか
テレビ設置の届け出義務化を要望
今月半ば、NHKが総務省で行われた有識者会議で、テレビ設置の届け出を義務化する要望を出した。これを受けてネットは当然のごとく荒れた。NHKを支持する声はほぼ皆無であり、反対・抗議する声はほとんど怨嗟というレベルに…と思いきや、むしろその提案を嘲笑するようなトーンである。
これまでさまざまな角度から問題点を指摘され、一時期は「NHKをぶっ壊す」なる剣呑(けんのん)たるフレーズが日常的に聞かれたくらいの組織、それがNHKである。インターネット全盛で媒体としてのテレビが劣勢なこの時にあって「受信料徴収の体制を強化しよう!」と言い出したら、それは当然たたかれるであろう。
とはいえ、そう言い出した背景には、これまで侮られ軽視されてきたNHK側の苦しさがうかがえないこともない。「これは受信料不払い世帯がさぞ増えているのだろう」と思いきや、NHKが公表している資料を見てみると、推計世帯支払い率は2013年度末で74.4%、そこから年々増加して、2019年度末ではなんと81.8%にまで達している。この上さらに徴収の体制強化とは、なんと強欲なNHK!とも思えるが、NHKの現在の運営に追い風が吹いているとはお世辞にも言い難いので、やはり危機感から「今後やばそうなので、今のうちに取りっぱぐれないシステムを作っておこう」と考えた上での、提案であると思われる。
NHKのあり方については散々議論されてきており、識者の方々が正当性を感じさせる意見をいくつも提示している。筆者はそうしたインテリ階級にはほど遠いただの中年であるからして、この適当な立ち位置を活用してざっくばらんに、NHKが今後どうあるべきかを考えてみたい。