――筆者のジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト
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変動の激しい市場では、攻めや守りに現金を使うことができる。最近までおよそ5億ドル(約520億円)の現金を持て余していたソフトウエア会社の米マイクロストラテジーは、その両方が可能だと考えている。
余剰資金をはたいて多額の配当金を支払うか、自社株の大部分を買い戻すこともできたが、マイクロストラテジーは総資産の半分をビットコインに賭けた。同社は上場企業か、それともヘッジファンドなのか。
こうしたデジタル通貨への進出は、昔ながらの投資のパラドックスに新たな光を当てている。偉大な金融アナリストのベンジャミン・グレアムがその昔に評したように、商品やサービスの生産に優れた企業ほど、事業の維持に必要とする以上の現金が積み上がるものだ。どうしてその余剰資金をため込んで遊ばせておくことなどあろうか、投資家であれば他にいい使い道があるかもしれないというのに。
金利が5%超だった頃には、ほとんどの投資家や企業は余剰資金を気に掛けることもなかった。金利がゼロに近い現在、投資家は注意を払う必要がある。現金が紙くず同様の時には、前例のないリスクを取らねばという圧力が高まりやすい。