インターネットの「知の巨人」、読書猿さん。その圧倒的な知識、教養、ユニークな語り口はネットで評判となり、多くのファンを獲得。新刊の『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せるなど、早くも話題になっています。
この連載では、本書の内容を元にしながら「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に著者が回答します。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

対比思考Photo: Adobe Stock

[質問]
会話のキャッチボールがうまくできません

 最近就職活動を行っているのですが、面接がどうしてもうまくいきません。そんな中とある企業の面接で「会話がたどたどし過ぎるし人になれてなさすぎる。頭の回転が悪そうで仕事ができなさそうだし(会社に)入れたいとは思えない」と言われてしまいました。確かにいわれた事は一理あるのですが、どうやったら誤解なく正確に伝えることができるのか、などを考えてしまいうまくコミュニケーションがとれません。何とかしたいと思うのですが、このようなときに役立つ本はないでしょうか。

話し下手のあなたの方が「言語能力」は高いです

[読書猿の解答]
 円滑な会話のほとんどは共通の話題についてメッセージを交換しているのではなく、考えずともできるパターン・マッチングによる条件反射を交代で行っているだけです。

 相手の発言を遮らず、相手が条件反射できる範囲で応答すれば会話は続いていきます。そこでは相手の話の内容を考えて理解する時間は基本的にありません。相手もろくに考えず話しているので、発言内容を理解した上で応答したりすると、相手は戸惑うか下手すると激高します。

 なぜなら、条件反射のパターンはさほど豊富でないので、ちょっとした変化にも対応し切れないからです。対応できなくなると、自分の会話パターンの貧しさが露呈してしまうので、「常識がない」などと言って怒って相手のせいにしたくなる訳です。

 会話のキャッチボーラー達よりも、話下手を自認する人たちの方が、実は語彙も豊富で、話す内容も深く濃い(頭の中で渦巻く言葉はむしろ多い)、総じて言語能力が高い、というパラドックスの一因がここにあります。

 会話のキャッチボーラーなど相手にしなくていい、と言いたいところですが、そうも言ってられないなら、対応法は「パターンを覚える」の一択です。何しろ会話のキャッチボーラーは、初級英会話並にパターンが貧しいので、パターンであることに気付けば比較的容易に習得できます。

 実地に観察すれば十分ですが、サプリメントにはビジネス会話集が使えます。ビジネス会話集を見ておいて、このパターンは実際に使われているかどうか、使われているとしたらどんな場面か、それでうまくいくかいかないか、など観察ポイントの手がかりにする訳です。