TSMCの強みは総合力だ。同社は5ナノメートルの最先端の微細化技術を用いた生産ラインを確立している。同社の収益には16ナノや28ナノの半導体生産も貢献している。プラットフォームごとに収益を見ると、スマートフォン向けを中心に、データセンタやIoT関連の売り上げが増えている。最先端から既存技術を用いた製品まで、需要に応じて迅速に生産を行う総合力がTSMCの成長を支え、それが台湾経済の成長に寄与しているといえる。

 米国の半導体企業は、知識集約的なビジネスモデルを目指し、設計・開発と生産の分離が進んでいる。それは、TSMCに生産を委託したほうが効率的だからだ。受託製造ニーズに応え、TSMCは米国政府の協力を得てアリゾナ州に工場を建設する。その一方で、TSMCは中国からも必要とされている。わが国企業もそうした力をつけるべきだ。

 米国がソフトウェア開発力を高めるには、労働コストが相対的に低いアジア新興国などとの関係強化が欠かせない。その点で、バイデン氏は、環境政策を進めてインフラ整備を中心に雇用を生み出しつつ、国際社会との連携を強化しなければならない。展開によっては、米国でiPhoneやSNSの創出に次ぐ新しい、大型のイノベーションが進み、世界の産業構造が変化する可能性もある。

 足元、半導体製造装置や高純度のフッ化水素などの素材分野でわが国企業は強みを発揮している。それは、技術力向上を目指すチャンスだ。ITや環境分野などでの最先端の技術開発に加え、社会のニーズに合わせた既存技術の応用を実現できれば、わが国は米中から必要とされる存在を目指すことができる。

 コロナショックによって、わが国には経済成長を支える有力ITプラットフォーマーがないことがはっきりした。弱み克服のためにも、わが国企業の総合的な技術力向上は大切だ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)