「元々、戦後すぐに生まれた団塊の世代とその次の世代までは、都心よりも郊外に住むサラリーマンの方が圧倒的に多かったんです。しかし、その潮流は1995年から96年にかけてガラッと変わり、都心居住がトレンドになりました。その理由は2つあります。

 1つ目は、かつて多数派だった『専業主婦世帯』と少数派だった『共働き世帯』のバランスが逆転し、夫婦ともに都心に出社する必要が出てきたこと。2つ目は大都市法が改正されて都心部に高い建物を建設することが可能になったこと。当時は1ドル80円を切る超円高時代だったので、湾岸部にあった工場の多くがアジアに移ってしまったんです。そこで何が起こったかというと、工場の跡地を買い占めたデベロッパーやゼネコンによって、タワーマンションが続々と建てられ、人々は吸い寄せられるように集まってきたというわけです」

 今から約25年前に始まり、コロナがはやる今年まで続いていたという都心居住のトレンド。コロナ渦以降に顕著な“郊外の街人気”は、都心居住が主流になる1995年より前のトレンドに回帰しているということなのだろうか。牧野氏はこう分析する。

「過去の潮流に回帰しているわけではありません。かつてのサラリーマンは、家を買うことが成功の証しという時代において、郊外に住みたかったわけではなく、郊外の家しか買えなかったんです。都心に住むのがベストだけれども、現実的には郊外を選ばざるを得ない人が多かった。しかし、コロナ渦の現在では、海が好きだから海に近い街でテレワークをする、といったように積極的に郊外の街を居住先として選ぶ傾向が見られるようになっています」

「千葉」や「大宮」も人気上昇
今後の穴場はどこか

 働き盛りのサラリーマンが居住地として郊外の街を積極的に選ぶ背景には「会社ファーストの住まい選びから、生活ファーストの住まい選びへと意識が変わったことが大きい」と語る牧野氏。郊外の街の中でもとりわけ支持されている「本厚木」の人気の理由についてこう語る。

「本厚木の魅力ですが、いざという時に都心にも行ける距離にあることが挙げられます。テレワークが普及したからといって、週に数回、あるいは月に数回は会社に行くわけです。その点、本厚木の交通便は理想的。1時間もかからずに新宿まで行くことが可能であり、少し足を延ばせば丹沢山系や箱根湯本といった自然や温泉も楽しむことができます。毎日通勤するのはしんどいけれども、たまに出勤するということであれば、この上なく住みやすい街なんです」

 本厚木の他にも、前述の「コロナ渦での住みたい街ランキング」では「千葉」や「大宮」などのいわゆる“郊外の街”が大幅に票を伸ばし、上位にランクインしている。支持されている街にはどのような共通点があるのだろうか。

「人気の街に共通していえるのは、海や山といった自然に近く、いざという時に都心にもアクセスできるという点です。加えて一定の社会的インフラが整っており、商業施設や飲食店も充実している。そのような街は今まで、都心という巨大な太陽を取り囲む『衛星都市』と呼ばれていました。今後、都心中心のライフスタイルが見直されていく中で、都心に出なくても衣食住を満たすことができ、レジャー施設も備えるそれぞれの衛星都市が、小さい太陽として栄えていくと考えられます」

 今後、居住先としてのニーズが高まっていくことが予想される衛星都市。大手飲食チェーンでは、都心の店舗の売り上げが伸び悩む半面、衛星都市での売り上げが大幅にアップするといった現象が見られており、都心中心の店舗展開が見直されるなど、企業側からも熱い注目を集めている。その中でも特に注目度の高い街を牧野氏に挙げてもらった。