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この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

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[質問]
 「本気になる」「妥協しない」ということについて書かれた著作や論文ありますか?

 自分は大学生なのですが、サークルの活動のなかで、よくこの二つのことを言われるのですが、よくわかっていません。本気になるためにはどういうことをすればいいのか、妥協しないために必要なことってなに? みたいなことが知りたいです。なかなか抽象的でうまい具合に探しだせていません。

「論文を書くなら?」と考えると答えが見つかります

[読書猿の回答]
 寡聞にしてよい文献を知りませんが、探し方を考えてみましょう。少し長くなります。

(1)テーマが一部だけ共通する文献を複数集める
 出題者の立場に立つとテストの答えが分かることがあるように、こうした場合、自分がこのテーマで論文を書くならどうするかを考えるとよいです。このテーマそのものを扱った文献がないからこそ論文を書こうとしているわけですが、かといって先行文献なしで済ますわけにもいきません。

 こうした場合、書こうとしているテーマと一部だけ共通する文献を複数集めます。

 例えば「サークル活動における『本気』と『妥協しない』の意味について」というテーマならば、「サークル活動」の他の側面を扱った文献、サークルではないが別の集団内や場面で『本気』という言葉がどのような意味で使われているかを扱った文献、同じく『妥協しない』を扱った文献……というふうに手を広げていきます。

 実は、テーマを絞り込めば絞り込むほど、「~における」といった〈テーマを限定する言葉〉が追加されていくので、この「一部だけ共通する」文献をより様々な方面に探せるようになります。これはテーマを絞り込むご利益の一つです。

 今のやり方を文献調査法として言い換えると、〈テーマの一部を置き換えながら文献探索する〉となります。

 置き換え方としては、文献が見つからない場合は、まずカテゴリー上昇を考えます。今の例だと「サークル(活動)」は何の一種か? を考えて、より抽象度の高い言葉に置き換えます。例えば「サークル」は「学生の集団」の一種であり、「サークル活動」は「大学生活の一種」です。さらに抽象度をあげるなら「サークル」は「人間集団」の一種であり、「サークル活動」は「人間の活動」の一種です。

 一般に抽象度を上げれば、より広い事例が該当するようになります。そのため、文献が見つからないときは、検索ワードの一部についてひとつずつ抽象度を上げて、文献が見つかるまで探索範囲を広げていきます。

(2)定義がない言葉については、使用の現場を観察し記録する
 さて、次はこのテーマの中核にある「本気」と「妥協しない」について考えましょう。辞書を引いても、周りの人に聞いても、その意味するところがよく分からない、しかしサークルの中では大切なものとして扱われていることが、質問者様の動機づけになっているようにお見受けします。

 このように、集団の中で特別な意味や高い価値を与えられながら、しかも集団のメンバーにも明確に定義できない言葉は、実は多くの人間集団に見られます(どんな言葉がそうなるかは集団ごとに様々ですが)。この特別な言葉の意味は、その定義を知ることではなく、集団になじみ、その中核を担うようになることで、おのずと体現されるものと考えられています。

「本気」と「妥協しない」がこうした言葉であった場合、サークルの外での定義を持ってきても役に立ちません。再び、この件について論文を書くことを考えるなら、そのデータはサークル内で、誰が誰に対してどんな場面でどんな風にそれらの言葉を用いているかに求めるしかありません。参与観察しメンバーのやり取りを観察記録することから始めるとよいでしょう。