今回、中国は何が何でも領土紛争の存在を認めさせようと、なりふり構わず日本に圧力をかけてきています。2005年にも違う理由により(日本の国連安全保障理事会入り問題)、似たような抗議活動があった。今回はそれをはるかに上回る激しさです。中国のこのような暴力的なやり方は、結局、世界において中国のイメージを大きく傷つけている。日本も、このような圧力に動揺する必要もない。そのためにも尖閣を守るために、海上保安庁は当然強化されるべきです。

 だが、領土がらみの問題だけで決着をつけようとすれば、自分が正しくて譲歩する必要はないことになりますから、自分の主張を貫くために、それぞれが動く。そうすると、それを打ち消すために、相手も動く。最後は日本なら海上自衛隊を出す、中国側は人民解放軍の海軍を出すということになり、これでしか決着がつけられないというところに追い込まれていく。

 ところが外交はどういう風に考えるか。尖閣を守るという巨大な国益は確かにある。しかし同時に、日本と中国との間には、貿易、投資を始め経済関係でも、お互いに巨大な利益がある。中国にいる日本人と企業の安全と財産を保全する。これらも国益です。日本と中国が喧嘩をしていては、アジア地域に平和と繁栄をもたらすことができない。アジアの時代は来ないということです。平和な国際関係がなければ経済活動はできませんし、経済活動ができなければ、私たちは飯を食えません。これらも全部国益です。

 尖閣問題では互いに自分たちが100%正しいと思っていますから、何がしかの譲歩らしきものをすれば、政府は妥協し過ぎていると批判される。日本国民から見ても、中国国民から見てもそう映る。

 ところが、お互いに妥協しない限り、衝突するしかなく、尖閣問題以外の日中の間にある利益を確保、維持できない。だから尖閣問題のために、すべてを犠牲にするというのは、私は外交としては正しくないと思っています。重層的、多元的な国益の集まりを最大にするのが、私は最高の外交だと思っている。一つ一つの具体的な問題については、妥協し過ぎだという批判は、往々にして成り立ちうるわけですよ。それは中国の外交当局も同じような立場に立たされているわけで、トータル、何が国家としてベストの選択なのかを国民の皆さんに考えてもらいたいと思います。

 私は、中国側も話し合いを望んでいるし、領有権の問題で一切譲歩することなく、この危機を乗り越える手はあると思っています。2006年に安倍総理が、靖国に行くとも行かないとも言わない「あいまい戦略」で危機を乗り切ったことを思い出してください。