中国での反日デモは沈静化し報道こそ減ってきたものの、いまだ尖閣諸島周辺の領海や接続水域では日・中・台がにらみ合い、緊張関係が続いている。互いに一歩も譲らず、硬直化したこの問題をどう解きほぐしていけばいいのか。『日中危機はなぜ起こるのか』の著書もある、米ブルッキングス研究所の外交政策上級研究員、北東アジア政策研究センター所長のリチャード・ブッシュ氏に、今回の尖閣問題に関して聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)

Richard Bush
1947年生まれ。ブルッキングス研究所の外交政策上級研究員、北東アジア政策研究センター所長。1978年コロンビア大学院で博士号。米連邦下院議会・国際関係委員会、CIA国家情報会議のメンバーを歴任。その後、元米台湾協会のトップ。2002年からブルッキングス研究所。マイケル・H・アマコスト記念研究者(アマコスト氏は元駐日大使で元ブルッキングス研究所長)。近著は『日中危機はなぜ起こるのか』(柏書房刊、森山尚美・西恭之共訳、原題:The Perils of Proximity: China-Japan Security Relations)

――尖閣諸島をめぐって、最近日中間で起きた出来事は、あなたの予想の範囲に入っていましたか。

 驚いてはいません。石原東京都知事が尖閣諸島を購入しようとしたことは予想していませんでしたが。これは中国も予想していなかったと思います。いったん石原氏が購入の意志を示した後、続いて起きた出来事は、特に驚くようなことではありませんでした。

――最終的に日本政府が購入したことは、間違った決断だったと思いますか。

 もし、尖閣諸島問題が表面化していなかったとしたら、すべての関係者にとってそれが最も好ましかったと思います。しかし石原都知事がイニシアチブをとり、それによって日本政府は窮地に追いこまれてしまったので、最後に残された選択として日本政府が買うしかなかったと思います。ただし私の考えは、日本の民間人がその島を所有しようと、東京都が所有しようと、日本政府が所有しようと、尖閣諸島を日本側が所有しているという見方を少しも変えるものではないということです。

――ある意味では、石原都知事が今回の騒動を引き起こしたということでしょうか。

 間接的に引き金になったということです。

――ということはblame(非難すべき、という意味での責任)は石原都知事にあるということでしょうか。