今の政権、次の習近平政権も経済成長抜きに、中国をまとめることはできません。経済成長が鈍化したら、あらゆる問題が暴発してしまう。中国共産党が生き残るためには経済成長を続けるしかない。だとしたら、中国は国際協調路線を取らざるを得ないのに、対外強硬一本やりで来るとなると、中国の国内問題が相当危険なところに来ていると見るべきでしょう。

等身大のコミュニケーションが
お互いの誤解を解く

――日中両国は、お互いがお互いに勝手に作り上げた虚像に向かって非難し合っているという面がありますね。

 あります。今回の尖閣列島の国有化についていうと、我々からすれば、主権と所有権の問題は全く次元を異にします。私有地が国有地になっても、所有権が変わっただけで、日本の主権下にあることに変わりはない。

 さらに言えば、日本の場合、私有地の売買は自由なわけです。もし、東京都が購入して都が思うように尖閣対策を行った時には、確実に中国との関係は悪化する。だから東京都に売却されないように、国が私人からその土地を購入する、すなわち国有化するということをやらない限り、東京都との売買を阻止する方法がない。だから、政府が購入して国有化する。

 ところが中国の人はそうは受け取ってない。中国語でも『国有化』ですが、一般の中国人は日本が長期にわたり実効支配をしてきたことを知らないので、日本が中国から「奪う」感覚で見ている。中国政府も、日本政府が東京都と結託しているとみているので、国有化するということは、これから日本が実効支配を確実に強化すると思っているわけですね。

 一方、日本では、中国が共産党を中心に一枚岩で、中国は大国にならなきゃいかん、だから軍事力を強化し対外的に強硬に出る、この機会に尖閣を取り戻そうしていると思われている。ところが中国では、今回は日本が攻勢をかけてきたので、やむなく反撃していると思っている。そこで過去の歴史ともつながって日本はけしからん、ということになっている。

 私は、多くの中国の一般国民は尖閣よりも国内の問題、自分たちの周りの問題がもっと大事だと思っていると感じています。格差の問題、腐敗不正の問題、医療費の問題、子どもの教育の問題、老後の生活の問題。どちらが大事かというと、圧倒的にこれらの方が大事です。彼らも自分の生活で一生懸命なわけです。それが普通の中国人です。そういう意味で、お互いの理解がもう少し「等身大」の相手のイメージに近づいてくれば、多くの問題でボタンの掛け違いをせずに、もう少し良いコミュニケーションできるはずです。