2月6日からは全国民が保有している「ICチップ入り健康保険カード」を利用したマスクの実名販売制度が始まり、1枚5元(約17円)で国民全員に公平公正にマスクが行き渡るようになった。

 さらに全国約6500店舗の「健保特約薬局」と呼ばれる当局から承認を受けた薬局のマスクの残存数(在庫)がわかる「マスクマップアプリ」が国民に無料で提供され、確実にマスクが買える環境を整えていった。

 一方、日本では、まったくマスク不足が解消されないまま、5月中旬に1世帯あたり2枚の「アベノマスク」が260億円余をかけて郵送配布された。2カ月かけておおむね配布完了と政府が発表したが、多額の予算投入と布マスクへの疑問や異物混入の不良品、そして未達報告が相次いで、逆に政府への不信と混乱を深めてしまった。

わずか10億円で
マスクの生産を増強

 台湾は、いち早く政権幹部がマスクの海外依存による危険性を認知して、1月末には国内生産化の推進に舵を切った。当時、台湾のマスクの生産量は日産188万枚、マスク不足による市民の恐慌、混乱が起こることは目に見えていた。

 そこで、台湾政府はマスク生産ラインを政府主導で増強することを決定。経済部(経産省に相当)が先頭に立ち、経済部技術系シンクタンク、全国の工作機械組合、精密機械メーカー、マスク生産工場、原料紡績所など30以上の企業団体組合らが協力して、半年以上かかると言われていた生産ラインを一カ月あまりで完成させた。

 一台約1000万円のマスク製造装置は、最終的に92台製造され、業界は国家の庇護(ひご)でマスク特需を享受した。この国産化で、マスクの生産能力は現在、従来の10倍近い日産1800万枚以上に到達し、台湾のマスク問題は解決するどころか、世界第2位のマスク生産国に成長。海外にマスクを贈与し、「マスク外交」まで展開したのである。日本にも多くの台湾製マスクが届けられたことを覚えている読者も多いはずだ。今では開発したマスク製造装置まで海外に販売している。