COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の家庭内感染が増え続けている。
同じ空間を共有している以上、感染リスクが高いのは当然として、少しでもリスクを減らすにはどうするべきだろうか。
今年春の第1波でCOVID-19の封じ込めに成功したシンガポール・国立感染症センターの報告によれば、家庭内感染のリスク行動は(1)寝室の共有、(2)感染者と30分以上話すこと(話しかけられること)の二つで、一緒に食事をすることやトイレの共有との関連は認められなかった。
シンガポールではCOVID-19と診断された全例に対して保健省が接触者の追跡とPCR検査、健康調査を実施しているが、本調査はそのデータを利用したもの。
感染が拡大し始めた1月23日から4月3日の間に、有症状者に対するPCR検査で陽性が確認された1114人について、家庭や職場、その他の場所での「濃厚接触者」を追跡している。濃厚接触者と判定された7770人の内訳は、家庭内が1863人、職場が2319人、その他が3588人で、20~30代の若い世代が中心。PCR検査では188人が陽性、7582人が陰性だった。
健康調査等のデータが揃っている対象者7518人を詳しく調べた結果、二次感染率は家庭内が5.9%、職場は1.3%、その他は1.3%と家庭内感染リスクはやはり高い。また、有症状者へのPCR検査だけでは、無症状を含む6割以上の感染者を見落とす可能性があることも判明している。
家庭以外での感染リスク行動は、2人以上の感染者との接触、感染者との30分以上の会話(話しかけられること)、感染者と同じ車に乗ることが関連した。
家庭内の水際対策はマスク着用、手洗いの励行だが、もしも家庭内に感染が持ち込まれた際は、感染者もしくは高リスクの家族を別寝室にすること。住宅事情もあるだろうが、できる限り対応しよう。
会話を最小限にする意識も必要だ。ただ家族が顔を合わせる食事の時間は大事にしたい。にぎやかなおしゃべりは難しいけれど、お互いにほっとできるはずだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)