新型コロナウイルスへの日本政府の対応を巡っては、初動の遅れや水際対策の失敗、さらに学校・教育機関への予告なしの休校要請や高額布マスクの配布など、混乱振りが目立った。さらにこれからのインフルエンザ流行期を控え、同時流行の不安も高まっている。一方、コロナをほぼ完璧に封じ込めている台湾では、頼れる政府が国民の不安を迅速かつ的確な対応で取り除き、政府、国民、メディアまでもが一丸になって感染拡大を抑えている。日本と同じく四方を海に囲まれ、国土は日本の10分の1、人口は日本の5分の1で、コロナの発生地である中国との往来が日本よりも多かった台湾がどのように感染拡大を防いだのか、台湾の中央感染症指揮センターの発表などを参考に考察してみたい。(アジア市場開発・富吉国際企業顧問有限公司代表 藤 重太)
PCR検査の
危険性を指摘
日本ではPCR検査についての論争や報道が絶えないが、台湾の中央感染症指揮センターの指揮官である陳時中厚生大臣がPCR検査について、8月22日の定例会見でわかりやすい見解を発表している。
台湾で帰国者、入国者へのPCR検査「陰性判定」での隔離処置緩和の要望が上がった件に関して、陳大臣は、今年1月から8月までの入国者25万人という数字と表を用いて、PCR検査の危険性を明確に説明した(下図参照)。
陳大臣の説明では、有病率を0.2%=500人として、PCR検査で感染者を陽性と判断する感度(図では敏感性)を90%、陰性を正しく判断する特異度(図では特異性)を95%と仮定し、陽性だが陰性と判定される「偽陰性」を500人のうちの50例、陰性だが陽性と判定される「偽陽性」が1万2475例発生すると説明した。