「私が悩んだ時間はなんだったの?」

 その話を切り出されたのは、今年の初め。
 
「ある日、突然、『俺、子どもが欲しいんだよね…』と言い出されて、『は?』と。続けて『ほら、俺って子ども好きじゃん?』と言われて『はあ?』って。あきれてしばらく返事ができませんでした。頭の中では『前は泣いたら殴っちゃうかもしれないって言ってたじゃん!』『今さら何を言ってるの?』って大混乱でした」
 
 よくよく話を聞くと、同じアパートに暮らす子どもたちと仲良くなったことがきっかけだったそうだ。子どもと話しているうちに、かわいいな、と思えるようになったのだという。
 
「そういえばよく仲良さそうに話しているな、とは思っていました。近所の子たちはまだ2歳ぐらいなんですけど、みんな確かにかわいいし、ニコニコしていて、とってもいい子です」
 
 とりあえず、その場は「そうなんだ」「考えてみる」と答えたものの、考えれば考えるほど腹が立ってきたというハルカさん。
 
「生計が2人で働いてようやくギリギリだというのは分かっているはず。私も、この数年で仕事を頑張った結果がようやく出てきつつありました。もちろん、子どもがいても仕事はできますが、40歳を超えて体力面や健康面にも不安があります。何より、どれだけ私が悩んで諦めたのか全然分かってなかったんだな、と悲しくなりました」
 
 また、問題はそれだけではなかった。

「ようやく大人になれた」という夫に呆然

「うちの夫婦はここ4年ほど、セックスレスなんです。2人ともそのあたりに淡泊というか…どちらも求めることがなかったので、なんとなくそうなっていました。それで仲が悪くなるということもなかったし。でも、子どもが欲しいとなったら、そうも言ってはいられない。その話もしたら『そうだよね、今さらそんな感じにもならないよね』と言っていて、何も言えずに笑うしかなかった…」
 
 何度かの話し合いの後に、ケンタさんも納得するにはしたらしい。今も表面上は変わらず仲の良い夫婦のままだ。しかし、ハルカさんの心中は穏やかではない。
 
「『子どもが欲しい、という気持ちを持ててよかった』『ようやく大人になれた気がする』って言ってるんですよ、今頃。ほんと、今までの結婚生活はおままごとの延長だったのかな?って。夫婦としていろいろ話し合ってきたつもりだったけど、結局は他人なんですよね。分かり合うのは難しい。孤独だなと思いました」
 
 ケンタさんの子どもが欲しい発言から半年がたつそうだが、ハルカさんの気持ちは日に日に冷めていっているという。

 これからどのように関係を築き直していくか、ハルカさんはまだ答えを出せていない。