交渉がいよいよ大詰めとなったとき、最終的に相手にイエスと言わせるための一押しとは? 新著『交渉上手』を上梓した弁護士の嵩原安三郎氏が、手強い相手もこちらの思い通りに動かすテクニックを解説する。
最後の最後に
「おまけ」をつける効果とは
交渉が煮詰まり、いよいよ合意間近、あとは上の決裁をとるだけ――。
この段階で人が感じるのは「やっとひと息つけるな」です。
「やれやれ、ようやくここまで来たか」と安心して、少し気が緩む。そこに付け込んで、最終的に、ほぼ100パーセントこちらの思い通りにする、というテクニックがあります。最後の最後に、こちらにとって有利な「おまけ」をつけ、相手に「イエス」と言わせてしまうのです。
これは、やり方を間違えると、単なる「ちゃぶ台返し」になってしまいます。たとえば、「単価10円で買う」と言っていたものを、最後の最後に「やっぱり8円にしてください」と言っても、なかなか通らないでしょう。
「ちゃぶ台返しをされた」と相手に思わせずに、うまく話を有利に運ぶ。それには、「相手の利益は守られているように見えて、結果的に、こちらの利益が確保されるようなポイント」を探すことです。
私の先輩弁護士で、まさにこの「おまけ」をつけるのが上手な人がいます。
たとえば、不貞がばれて離婚と慰謝料請求を受けている男性からの依頼を受けたときのことです。