英製薬大手アストラゼネカのパスカル・ソリオット最高経営責任者(CEO、61)は、どの競合相手よりも安い価格で多くの新型コロナウイルス予防ワクチンを提供すると表明していた。だが、ベルギーの工場が抱える製造問題により、欧州向け数千万回分のワクチン供給に遅延が発生。すでに遅れが目立っている欧州のワクチン接種計画を揺るがすとともに、ソリオット氏が昨年表明した「利益なしで世界にワクチンを提供する」との異例の確約も大きく脅かされている。アストラゼネカはさらに、欧州工場に続き、米国やオーストラリアでもここにきて同様のトラブルに見舞われており、対応に当たっていることを明らかにした。こうした状況は、アストラゼネカが「ワクチン軍拡競争」で先頭集団から取り残されつつあることを物語っている。世界の製薬業界において、ワクチンは通常、低利益率かつ厄介なニッチ市場とみなされており、アストラゼネカはこの分野で比較的経験が浅い。特にチンパンジーが持つかぜウイルスを基に作られる同社のワクチンは、先端の遺伝子技術を活用した米製薬大手ファイザーや米バイオテク企業モデルナのワクチンと比べて、短期間に増産することが難しい。
ワクチン供給で一悶着、アストラゼネカの裏事情
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