金の投資家には少々気の毒な状況だろう。各国中央銀行や財務省は資金供給の口を開き、世界の金融市場のあちこちで投機的なブームが起きているように見える。金は本来、政府の金遣いの荒さに懐疑的な目を向ける人々のお気に入りの資産だったはずだが、過去12カ月の金のパフォーマンスは、S&P500種指数の上昇率を下回っている。金の価格は、1トロイオンス=1800ドル(約19万円)にやや届かない水準にあり、2050ドル前後の高値で推移していた昨年8月初めを大幅に下回っている。ビットコインが5万ドルに達し、ソフトバンクの株価がドットコムブームの頃につけた最高値を超え、銀にも個人投資家の買いが入っている状況を見るのは、金の保有者には特につらいことだろう。多くの人は、過去1年の異常な市況の下で、本来の投機的資産である金の好調を予想していた。