新型コロナウイルスの影響でテレワークという働き方を選ぶ人が増え、これまで以上に親や配偶者を「在宅介護」しやすい社会環境となってきた。しかし、読者の中には「在宅介護は大変」「仕事を辞めざるを得なくなった」「介護うつになった」などネガティブな意見ばかりが耳に入り、いざ在宅介護に踏み切るのはためらってしまう…という人は多いだろう。そんな中、妻を自宅で看ると決めた夫がいる。各媒体で人気の「連載コラム」の著者に聞くシリーズ、第4回はWEB媒体『デイリー新潮』(新潮社)で連載中の「在宅で妻を介護するということ」の著者・平尾俊郎氏だ。(フリーライター 岡田光雄)
妻は「要介護5」で
寝たきり状態に
「施設から在宅へ」「病院から自宅へ」という旗印の下、政府は介護人材の不足を理由に在宅介護を推進している。特にコロナ禍の最近は施設でのクラスターを不安視し、在宅介護を選ぶ人が増加傾向にあるという。
フリーライターとして働く平尾俊郎氏(68歳)もその一人。2年ほど前から在宅で妻(62歳、要介護5)の介護に取り組んでいる。子どもはおらず夫婦2人、千葉県千葉市の賃貸マンション暮らし(家賃8万5000円)。妻はアルコール依存から神経系の急性疾患「ウェルニッケ脳症」を発症し、四肢が自由に動かず寝たきり状態となった。会話はできるが短期記憶障害が残り、30分前に話したことを忘れてしまう状態。糖尿病と統合失調症も併発している。