写真:自転車の事故
写真はイメージです Photo:PIXTA

自転車で通勤途中に、歩行者を巻き込む事故を起こしてしまった30歳の社員。被害者から300万円以上の損害賠償額を求められたが、会社は負担してくれるのだろうか。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 オフィス向けの事務用品を扱う専門会社で従業員数は200名。
<登場人物>
 A:30歳。地元の大学を卒業後甲社に入社。学生時代は運動部に所属していた。
 B:30歳。Aの幼なじみ。Aの自宅近くに住み、サイクリングが趣味。
 C:50歳。甲社の社長。
 D:35歳。事故の被害者。フリーランスで肉体労働に従事している。
 E:甲社の顧問社労士。

デスクワークで体重増、ジム通いもコロナ禍でためらう

「ガーン!また3キロ増えてる!」

 2020年の10月上旬、1カ月ぶりに自宅の体重計に乗ったAはショックのあまり大声で叫んだ。入社以来、営業で全国を飛び回り激務をこなしていたが、2020年の4月から総務課に配置替えとなり、これまでとは一転してデスクワークとなった。そのせいで半年間で体重は15キロ以上も増え、これまで自慢だったスリムな体形は見る影もなくなった。危機感を持ったAは自宅近くのスポーツジムで身体を鍛えまくって痩せようとしたが、新型コロナ感染のことが気にかかり入会をちゅうちょしていた。

 10月下旬の土曜日、AはBとスマホで世間話をしていたときに何気なくつぶやいた。

「実は俺、ここ半年太り過ぎて悩んでいるんだ。1年前にはいていたズボンはもうキツキツだし、昨日なんて椅子に座った途端ワイシャツのボタンがはじけ飛んじゃったところを同僚の女性に見られて笑われるし。もう恥ずかしくて情けないよ。ホント痩せたいんだけど何かいい方法ない?」

 すると、Bは明るい声で言った。

「じゃあ、明日俺と一緒にサイクリングに行こうよ」

 突然の誘いに驚いたAだが、予定は何もなかったので誘いを受けることにした。Aは自転車を持っていなかったが、Bが使っていないクロスバイクを貸してくれることになり、早速Aの自宅に持ってきてくれた。そしてその場で明日の待ち合わせ時間を約束した。