実家の父親から家業を継いでくれと頼まれた30歳の営業マン。勤め先の会社と相談し、年度末に退職することになったものの、なかなか後任社員の採用が決まらず、引き継ぎに時間がかかることから、退職時の有休消化を上司から拒まれてしまうはめに。「ちょっと待て。これは違法じゃないのか?」上司と対峙した営業マンが提案した、ある条件とは。(社会保険労務士 木村政美)
首都圏でオフィス用の機械販売とメンテナンスを行っている。従業員数は100名。
<登場人物>
A:30歳。大学卒業後、半年間のフリーター生活を経て入社。営業を担当していたが、実家の家業を継ぐため3月末で退職する予定。
B:40歳。営業課長でAの上司。
C:40歳。総務課長。
D:甲社の顧問社労士。
「田舎でのんびりするのもいいか」
家業を継ぐために退職を決意
「早く会社を辞めて、ウチの仕事を継いでくれ。ワシはもうダメだ」
年末年始の休暇中に実家に帰ったAは、いきなり父親から頼み込まれた。70歳代半ばのAの父親は、半年前に大病を患ったせいで急に身体が弱くなり、その後仕事をするのがかなりしんどくなってしまったようだ。父親の病気後は、Aの母親がほとんど家業を切り盛りしているが、こちらもそろそろ限界である。
父親の話を聞いたAは、「オヤジがそんなにキツイんだったら、どうせ儲かってないんだし、家業をたためばいいじゃないか」と反発したが、父親と母親はそれでもめげずに「ウチの家業はこの場所では絶対必要な仕事だから、後を継いでほしい」と訴え続けた。そしてAは両親のあまりの必死さに折れ、家業を継ぐことを決心した。
「俺は1人っ子だから、ゆくゆくは実家に戻って両親の面倒をみなければならない。それに今の仕事は楽しいけど、業務量が増える一方で体力的に厳しいし、そろそろ田舎でのんびり暮らすのも悪くないか……」