新卒の社員が入ってはや1ヵ月半。研修真っ最中の会社もあれば、短い期間で研修が終わり、上司と新人が一緒に仕事をし始めた会社もあることだろう。そうした状況で起きがちなのが、上司・先輩と新人との価値観のすれ違いや、それが原因の1つとなりうる職場トラブルである。そもそも職場の空気が読めない問題児の新入社員は昔からいたし、入社したての新人が上司・先輩との接し方に悩んでメンタル不調に陥ることも珍しくない。しかし最近では、これまでの職場のやり方では対処がままならない「職場トラブル」も増えている。そこで今回は、私が社労士として見聞きしてきたなかで、最も印象深かった「新人トラブル」の事例を紹介したい。(社会保険労務士 木村政美)
新入社員向けの社内研修が終了し、Aは6月から営業課に配属された。仕事はB課長の指導のもと、営業の同行からスタートし、毎日マンツーマンで営業についてのイロハを教わることになった。そして1ヵ月後からは1人で担当エリアを受け持つようになった。「外回りは性に合っている」とばかりにAは張り切って仕事に精を出していた。
ところが、配属後3ヵ月が経った頃、異変が起きた。さて、Aはこれからどんな行動を起こすのか。本題に入っていく前に、まずは甲社の概要と登場人物を簡単にお伝えしよう。
自動車部品を扱う専門商社。社員は約50名。業績は順調で昨春5名の新卒が入社した。新人のAが配属される営業課は少数精鋭の花形部署。課員は担当地域の顧客先を営業車で訪問するが、新規開拓の飛込営業は一切なく、ルート営業が主である。Aを採用したのは、「未来のリーダー候補」として大いに期待をかけていたためである。
登場人物
A:トラブルを起こした新人。大学では体育会に所属し主将を務めていた。身長は185cmくらい。ガッシリ型の体型で、肌は浅黒くたくましい風貌である。声は大きくてきぱきとしたタイプ
B:営業課の課長でAの直属上司
C:甲社社長
D:C社長の友人で社労士
E:営業課の若手リーダー格