ここ静岡県御前崎市の浜岡原子力発電所では、コンクリートの壁が海岸線に沿って約1.6キロ続いている。壁の高さは海面から約22メートル。想定可能な津波のほぼすべてに対する防御を提供する。2基の原子炉は、水を沸騰・蒸気を発生させて発電を行うために核分裂を起こす準備が整っていて、原発事業者はそのことを規制当局に伝えている。しかし、総費用約4000億円と見積もられる安全対策にもかかわらず、浜岡原発は2011年5月以降、1キロワットの発電も行っておらず、再稼働の目標期日も定まっていない。屋外掲示板の塗装は色あせ、固定してあったはずの古びた「立入禁止」の看板は、地面に落ちていた。同原発が徐々に放置状態に近づいている証しだ。
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