昨年12月初め、米沿岸警備隊の巡視船「マートル・ハザード」の乗員は夜を徹して航行し、太平洋の島国パラオの沖合で停泊し、一群の中国のボートに乗り込んだ。何万ドル相当もの密漁ナマコの押収作業を支援するためだった。この巡視船が任務を遂行していた海域は、米本土から約1万キロメートル、母港である米領グアムの港から約1200キロ離れている。こうした任務は沿岸警備隊にとって拡大しつつある最新の活動分野の一部だ。太平洋で強まる中国の海洋進出に対抗する支援活動である。中国は、漁船団と沿岸警備隊(海警)、海軍の行動を連携させて、南シナ海でのプレゼンスを確立してきた。南太平洋や中央太平洋でも存在感を増している。中国の漁船団は、キリバス共和国やツバルなど島国の周辺にも大挙押し寄せている。これらの海域には、世界有数の資源量を誇るマグロの漁場が幾つかある。中国海軍もこの海域で存在感を示しており、2019年に軍艦がシドニーに寄港したほか、18年には海軍の病院船がフィジーを訪れている。
中国に対抗する米沿岸警備隊、本土を遠く離れて
西太平洋での活動拡大、中国漁船の取り締まりも支援
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