今年に入り、NFT(非代替性トークン)市場の盛況ぶりが大きく報じられた。米プロバスケットボール協会(NBA)のスター選手、レブロン・ジェームズのハイライト映像など、さまざまなデジタルアートが数十万ドルかそれ以上で売られている。デジタル作品の所有権をブロックチェーン(分散型台帳技術)で登録・認証するために用いられるNFT技術は最新のものだ。だが、デジタル絵画のように豊富に存在し、簡単に複製できる作品を希少価値のあるものにするというコンセプトは、新しい現象ではない。安価に複製できる創作作品を巡る苦闘は、知的財産法の始まり以降、何世紀も続いている。ある種の限られた人為的な希少性は有用で、創造性を奨励する。音楽は厳密に言えばほとんど無限の財だが、完全に無料で共有できるデジタルオーディオの世界では、アーティストは生計を立てるのに苦労するだろう。同じ論理は新聞のペイウォール(ウェブサイトの課金)にもあてはまるかもしれない。