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この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「目先の作業」はできるのに「数ヵ月単位でやるべきこと」に手がつけられない理由Photo: Adobe Stock

[質問]
「小説を書く」ができない

 私は昔から「現場に出向いてやればよいこと」「今すぐやればよいこと」はすぐにこなすことができますが、「家でやること(文章を書くなど)」「数日~数ヵ月でやればよいこと」となるととてもつらいものに感じてしまい、こなすことができません。

 要は、〆切の設定を守れないのです。あわせて、〆切を意識し続けなければならない状態もとても苦手なようで、手をつけない間は不安が拭えず、かといって取り掛かろうとすると相当なエネルギー消費を要します。

 今、苦手二つを兼ね備えた「小説を書く」というチャレンジに取り組んでいるのですが、まるで書けずに〆切を破ってばかりです。自分が無事にこなせるパターンを鑑み、「現場に出向く」=喫茶店で書いてみる、「今日やればよい」=一日に書く量を決めてみる、など工夫はしてみたのですが、どうやら頭を騙せていないようで、まったく短期モードに切り替わりません。

 どうすれば、時間のかかるものごとを確実にこなせるようになるのでしょうか。なにか読むべき本がありましたら、お教えください。

「小説を書く」を作業に分割してみてください

[読書猿の回答]
「時間のかかるものごとを確実にこなす」には、大きな仕事を小さな作業に分割し、一つ一つ片付けていけばよいのですが、察するに、あなたは「小説を書く」仕事をどのような(たくさんの)作業に分割すればいいのか分かっておられないのではないでしょうか。

 残念ながら「小説を書く」ことはヒトという生き物の生得能力ではありません。これは、生まれつき小説を書ける人はいないということ、後天的に学習した上で自分なりの方法を開発する必要があるということです(たまに生まれつきだけで書いているような天才がいますが、もし本当に生得能力ならばヒトが地上に登場してから小説が生まれるまで、これほど時間を要しなかったはずです)。

 質問に戻って、「小説を書く」ことが生得能力でないことを言い直せば、小説を書ける頭のモードなるものは(少なくともデフォルトでは)ありません。

 言い換えれば、頭のモードを切り替えるだけで、書ける小説はありません。

 あなたが「現場に出向いてやればよいこと」「今すぐやればよいこと」ならば、すぐにこなすことができるのは、何をすればいいか明らかだからです。

「小説を書く」ことについて、同じようにできないのは、(最初に述べたことの言い直しですが)それぞれの段階で何をすればいいか分かっていないからです。

 本来ならここで、「小説を書く」手順(レシピ)のようなものを説明するところですが、ご質問からずいぶん遠ざかったので、ここで一旦終了することにいたします。