『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
(こちらは2020年11月の記事を再掲載したものです)
[質問]
Googleで検索すれば何でもわかるのに、学ぶ意味は何ありますか?
これまでの社会では、テクノロジーの進歩が遅く、知識は陳腐化せず、ある程度価値を持っていました。そのため、学校では知識を大量に詰め込む学習を行われていました。
しかし、現在では技術の進歩が人間の学習スピードを大きく上回っており、知識のブラックボックス化が進んでいると聞きます。Google等によって知識の外部化が進む中、人間が知識を得て、学ぶことの意味は何なのでしょうか?
知識は常に更新してこそ意味があります
[読書猿の回答]
一人の人間の学習スピードを上回る速度で「技術の進歩」が生じているのは、多くの人間が知識を得て学んだ上で知識の更新に尽力した結果だと思うのですが、ひょっとして既に高度な研究用人工知性が人の手を離れて知識をマイニングし続ける未来からのご質問でしょうか?
作動原理が分からなくてもその技術の成果を利用できることを「(技術の)ブラックボックス化」というようですが、よく知ってもいない知識を利用できると思うのは「知識のブラックボックス化」というより、単なる知ったかぶりです。
学校で扱うことのできる知識は、時間その他の事情から、人類が重ねてきた知識に対して、いつの時代も限定されたものですが、学校では知識だけでなく、その扱い方や取り扱う態度を学びます。何故なら、学校で学んでいる若い人たちは、次の時代に新しい知識を生み出し、更新することを期待されるからです。
受け取った知識をディティールを取り落とすことなく扱うこと、学んだ知識を使って問題を解くこと、間違えたら自らそれに気付き、臆することなく修正することなど、こうした知識に対する真摯な態度を身に着けた人たちが、新しい知識を生み出し、次の時代を築いていきます。