発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター。こちらは2020年12月27日の記事の再掲載です)。

発達障害の僕が発見した「風呂は好きだけど、毎日入るのが鬼めんどくさい」を解決するスゴ技

発達障害にとって風呂は「ストレートのウィスキー」

「入って後悔する風呂なし」。

 僕が知る限り、最も正しい言葉のひとつです。人生、いついかなる時であれ、風呂に入って後悔することはない。にもかかわらず、人は風呂に入れないことが多々あります。特に、ASD傾向が強い人にとってこれはシャレにならない問題といえるでしょう。

 僕もそれなりに強いASD傾向があるので、この感覚は理解できます。というのも、風呂というのは皮膚刺激がものすごく強いのです。もちろん、シャワーの流水や湯船の温浴が苦痛なのではありません。ただ、そこに入っていくためにはかなり大きい決断が必要になるのです。

 ストレートのおいしいウィスキーを想像してみてください。これをグイっと喉に落とせといわれたら、おいしいとはわかっていても多くの人は逡巡するでしょう。僕と風呂の間の距離感はそういう感じです。うつがひどくなってくると、やはり入るのが難しくなってくる。「風呂に入るぞ!」と叫んで太ももを何度もたたいてやっとのことで入浴を済ますなんてことが、僕にはよくあります。そしていつも、上がったあとは「入ってよかった」と思うのです。

 それでもうつがひどいときは10日以上風呂に入れないこともあります。結果、身なりが汚すぎて外に出られず、冷蔵庫の備蓄食材も切れ、「お腹がすいて死にそうなのにどうしてもお風呂に入れない!」と床にはいつくばって泣くことになりました。

風呂モチベーションを上げる3つのスゴ技

 障害特性からくる風呂への苦手意識、これは仕方ありません。少しずつ、「風呂は入ったら気持ちいいし、出たらさっぱりしてやはり気持ちいい」成功体験を積み上げていく他ないと思います。

 ただ、根源的な問題は解決できないにせよ、それを取り巻く多くの問題はちょっとした工夫で解決できます。つまり、入浴へ向かうモチベーションにマイナス影響を与えるものを減らすこと。そして、プラスのモチベーションをつくり出すこと、それは可能なのです。

(1)「掃除セット」を常備する
 風呂に入れない物理的な理由としては「風呂が汚ねえ」というものが挙げられると思います。高湿な場所ですし、油断するとカビだらけになってしまう。カビの黒ずみを踏みながらなんとかシャワーを終わらせるのは、なかなかに物悲しい作業です。そこで、まずシンプルに風呂掃除道具を常に備蓄しましょう。カビキラー1本、湯船を磨く洗剤1本、そして風呂磨きスポンジ(効率を考えると大きいサイズがおすすめです)をひとつ。このセットを、風呂場に常備するべきです。

 掃除には不思議なところがあります。やりたくなかった作業を始めてみたらスイスイ捗った経験が誰しもあると思うのですが、あれは作業興奮なるものが発生しているからです。そして、風呂掃除はこの作業興奮が極めて発生しやすい部類なのではないかと僕は思うのです。みなさんも覚えはないですか、ちょっとしたカビをきれいにするだけのつもりだったのに、気づいたらドアのガラスまでピカピカにしてしまった。あの掃除の後に入る風呂がたまらないんですよね。至福の瞬間のひとつだと思います。

 風呂掃除における優れた点は、たとえば皿洗いのように「シンクにたまった皿を一度どかして場所をつくって並べ替えて……」のような準備作業が少ないことにあります。要するに、道具さえあれば即やれるのです。これはかなり大きい強みになるでしょう。これで、「風呂が汚ねえ」問題は回避できます。

(2)風呂を「エンタメ」の場にする
 プラスのモチベーションをつくるのも大事です。たとえば、お風呂に持ち込める防水のタブレット。お風呂でボヤーっと眺める動画、最高じゃないですか。あるいはトウガラシやショウガが配合されたガンガン汗の出る入浴剤なんてのも楽しいです。

 僕のお気に入りは「アカスリ」です。これがね、ゴシゴシやると気持ちいいんだ。皮膚刺激が強いからちょっと勢いは要りますが、あのボロっと取れるアカはなかなかの作業興奮を生んでくれます。きれいになった肌に当たる風呂上がりの空気も気持ちいいですね。

(3)バスタオル・ローテーション
「お風呂に入れない」の最後のラスボスとして「バスタオルがない」があり得ます。早急に、バスタオル・ローテーションを組み立ててみましょう。

 まず、何よりバスタオルの枚数を増やします。20枚以上は買ってください。次に、タオル専用の洗濯物入れを用意します。タオルだけの洗濯、実はとってもラクですからね。あなたがタオルを洗えない理由は、服と交ざっているからなのです。