発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります。
今回は、大盛況に終わったオンラインイベント「発達障害なんでも人生相談」で寄せられた読者の質問と、借金玉さんの回答をお伝えします。

発達障害の僕が発見した「日々の生活に全くワクワクしない」と感じたら今すぐ知るべき2つの対応策Photo: Adobe Stock

<質問>
 自分が好きなこと楽しいことがどんどんわからなくなってきます。どうやったら増やせますか? 原因としては、幻想が悪い意味でなくなってきてるのかと思います。

<答え>

まずはコーヒー豆をひいてみよう

 かつてはポリタンクからガブガブ飲むように溢れていた期待感が、今はほんの少しのどを潤す程度にしかならなくなってしまった。「楽しいことがわからなくなってきた」というのは、僕にも少しわかります。それはある意味で成長と言えます。何をやればどれくらい楽しいか、結果が予測できてしまうようになると楽しみは半減してきますよね、社会人3年目くらいに起きやすい症状です。

 対処法として僕が第一におすすめするのは、家においしい紅茶やコーヒーを置いて飲むことですね。お金を全然かけなくても、人生や生活ってそんな小さなところから結構変えられるものです。

 重要なのは、「文化として楽しむ」こと。コーヒーの場合なら、「豆を挽く」とか「ハンドドリップする」…そういったやりこみ要素が山ほどあります。こういった、「文化」は飽きが来ません。コーヒーを飲んでリラックスする時間が良いものなのは言うまでもないですし、技術が向上してコーヒーが美味しくなっていくのはそれ自体がとても楽しい。

 やりこみ要素の少ない「楽しさ」は、大抵の場合色あせていきます。そして、働いていると娯楽はついインスタントなものに流れがち。そういう時こそ、ちょっとしたところから手を出せる「文化」を探してみてください。コーヒーも紅茶もやりこんでいけば10年20年と遊べる趣味です。自分で淹れたコーヒーが最高に好みの味に仕上がったら、少しだけ人生は楽しくなるはずです。

 もう一つのおすすめは、「全く計画的ではない行動」をしてみることです。突然、何も用事がないのに家の近所の土手に行ってみるとか、見覚えはあるけど入ったことのない店を冷やかしてみるとか。こんなご時世なので、近場で十分だと思います(いきなりタイに弾丸旅行ができたらいいですけどね!)。見慣れてしまった場所でも、結果が予測できない行動をすることで、必ず人生に驚きと楽しさをもたらしてくれます。

 社会生活に慣れてくると、行動も娯楽もすべてがルーチン化してしまいがち。そこから少しだけ抜け出せる方法を、いくつかでも見つけておきましょう。世界は楽しいことで満ち溢れています、問題はそれを見つけられるかだけです。あなたの視界を覆っている日常のルーチンを、少しだけ変えてやりましょう。

★大好評著者インタビュー「だから、この本。」
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第2回 発達障害の僕が発見した「学校に適応できず破滅する子」と「勉強で大逆転する子」の決定的な差
第3回 発達障害の僕が失敗から見つけた「向いている職業」「避けるべき職業」
第4回 発達障害の僕が伝えたい「意識高い系」の人が人生から転落する危うさ